薬用のユリアは粉状で、苦みがとても強いのでオレンジジュースなどに混ぜて飲む。EditorialのDaniel Bechet医師(Montrealの人)が試したところによると「格別においはないが、苦味は強い」とのこと。また別の論文では「北アメリカの味覚に合うことはまれ」と書かれている(JASN 2008 19 1076、冗談かと思うが学術雑誌でもこういう楽しい文章を目にすることがある)。ベルギーといえばビールが有名だし、苦くても平気なのだろうか。
ユリアは、solute excretionをあげることでosmotic diuresisを起こし、たとえ尿浸透圧が変わらなくてもfree water clearanceを上げることができる(JASN 2008 19 1076)。Free water clearance = solute excretion/Uosm x (1 - Uosm/Posm)に示されるように、溶質排泄量はfree water excretionのmain determinantだからだ。
たとえば尿浸透圧600mOsm/kgの人が、1日600mOsmの溶質を摂取していたならば尿量は1L/dayだが、ユリア30g(分子量60なので、500mmol)を摂取すれば1日の摂取量は1100mOsmとなり尿量は1.8L/dayに増える。実際には、たとえADH存在下で腎臓が水を再吸収しようとしていても、溶質が増えると尿浸透圧は下がる(JASN 2008 19 1076)。
そんなわけでユリアの有効性は理にかなっており、アメリカでも昔はつかわれていた。SIADHへの有効性を示したベルギーのグループによる1980年の症例報告(Am J Med 1980 69 99)でも、ユリア90g/dで尿量が1L/dayから3L/dayに増え、Naレベルも一気にあがった(~15mEq/L/day、怖くなるほどだが何も起こらなかったらしい)。
また同じベルギーのグループが急性低Na血症の入院診療にユリアを用いたスタディ(restrospective)でも、ユリアはNaレベルを上げるのに有効だった。これはSIADHのみならず、すべての低Na血症が対象であった(原因ごとに治療効果に差があったかは書かれていない)。ほかにも、稀な病気だが腎臓内科(と小児科)なら関係あるNephrogenic Syndrome of Inappropriate Antidiuresis(バソプレシン受容体2のgain-of-function mutation)は、バプタンは効かないがユリアは前述の理由で強制水利尿を起こし効く(J Pediatr 2006 148 128)。つづく。