2012/04/11

cardio-renal syndrome

心不全の患者さんが、心機能低下に伴い(あるいは食塩摂取過剰のため)肺水腫、浮腫、体重増加などで入院してくると、みな利尿剤を投与される。ただ利尿剤は血管の外に漏れ出た体液を血管の中から除く治療なので、血管外から血管内への体液移動がスムーズでないと血管内ばかりがdryになって腎機能が悪化する。とはいえ、心のポンプ機能をよくしなればそもそも腎臓に届く血液量が増えないので腎機能は良くならない。だからこの状況でどのように利尿剤を使うかはなかなか難しい。
 人によって何を指標に利尿するかは違う。循環器科医は左房圧のsurrogateであるwedge pressureを絶対視している。だが他にも頚静脈圧とそのsurrogateである頚静脈努張、肺野所見、浮腫所見、体重、腎機能、metabolic alkalosis(contraction alkalosis)、などさまざまなパラメターがあって、総合的に判断しなければならない。どれくらい量をつかうか、持続静注とbolusではどちらが良いか、なども診療指針がないと思っていたが、昨年にはじめてこれについてのRCTがでたと知った(NEJM 2011 364 797)。
 この論文によれば、low dose(外来処方と同量のIV、すなわち約二倍の力価)とhigh dose(外来処方の2.5倍のIV、すなわち約五倍の力価)ではhigh dose群で体重はより減少したが、症状の軽減や入院期間には有意な差が見られなかった。bolusとcontinuous infusionでも(薬理学的には後者のほうが利尿に優れているとされているが)、やはりcontinuous infusion群で体重はより減少したが、症状の軽減や入院期間には差がなかった。クレアチニンの増加にも有意な差は見られなかった(なおこのスタディではクレアチニンが3mg/dl以上の患者さんは除外されている)。