2012/04/29

Oleander

 スタッフが「スリランカから来た人が自殺目的にOleander(夾竹桃)の種を大量摂取して運ばれてきたら、どうする?」という問題を回診中に出した。何のことやらと思ったが、話を聞くと夾竹桃にはoleandrinという強心配糖体が含まれ、Na-K-ATPaseを阻害して房室ブロックやら高カリウム血症やらを起こす。治療はDigibind(digoxin derivativeに感作されたヒツジの血清から取られた免疫グロブリンFabフラグメント)。強心配糖体はどれも分子量が大きく、かつ脂溶性でvolume of distributionが高いため透析除去できない。





[2019年8月12日追記]夾竹桃の花が咲くのは、盛夏(写真は筆者撮影)。夾竹桃の描写で始まる夏川草介著『神様のカルテ0(2015年)』の一短編、『有明』を読むまで知らなかった。咲き誇る夾竹桃の描写も、人物達の熱い思いや純情も、どこか涼しげに感じられる。信州が舞台なことと、漱石を意識した文体、そして医師でもある作者のクールな視点がそうさせるのだろう。まだお読みでない方はどうぞ。