2012/04/15

AKA

 腎臓内科のgrand roundはフェローとレジデントが発表するだけでなく、ときにはスタッフが発表する。先週は、わたしが七月に来たばかりの時にコンサルトでお世話になった教育熱心な、うちの大学でteacher of the yearを何年も連続して受賞している先生だった。この先生はおそらく60才前後であろうが少年のような目をした人で、症例で面白い点があったり、学ぶ意欲のある学生をみると目を輝かせる。そしてやはり毎日自転車通勤だ。そんな先生の発表は、やはり聴衆を引きつけた。うまく言えないが、違いが他のスタッフにくらべて明らかだった。話す様子に情熱が溢れている。そして分かりやすい。それを聴きながら、似たものを感じた。自分も教育、発表のアートをこんな高みに持っていけたらと思った。

  発表の中心はAKA、アルコール性ケトアシドーシスだった。AKAが起こるには①アルコール、②飢餓、③体液量減少、の三つが必要だ(AJM 1991 91 119)。①では大量に摂取したアルコールを代謝することでNAD+が消耗され大量のNADHが産生される。NAD+が消耗されると糖新生が起こりにくくなる。②ではglycogen storeがなくなり、③ではカテコラミン、コルチゾール、成長ホルモンの分泌促進になり、結果的に体内が低インスリン・高グルカゴン環境になる。低インスリン・高グルカゴン環境によって脂肪酸が一斉に(carnitine acyltransferase I、IIにより)ミトコンドリアに取りこまれβ酸化を受ける。

 β酸化により生じたβketo-acidであるacetoacetateは大量のNADHにより還元され、すぐさまβ-OH butyrateとなる。大量のNADHはまた、pyruvateをlactic acidにしてしまう(NAD+がないのでpyruvateはTCA cycleに入れない)。それでAKAでは尿検査のケトンが陰性(dipstickはacetoacetateを検出するから)で血液のβ-OH butyrateレベルが非常に高く、lactic acidosisを呈することもある。ただlactic acidosisについては、論文によれば肝臓にくらべてまだNAD+が残っている末梢組織で乳酸がpyruvateに戻るので、sepsis、thiamine deficiency、seizureなどが併存しない限りuncommonという(Emerg Med J 2006 23 417)。

 このことから、発表した症例ではlactic acidが高値であったため、別の先生が「この症例ではthiamine deficiencyを考えなければならない」とコメントしていた。それにしても腎臓内科にいると何から何まで勉強しなければならないから、飽きなくてよいが結構大変だ。