尿中の変形赤血球(dysmorphic RBC、図はNEJM 1996 334 1440;浸透圧により金平糖状になったcrenated RBCとはことなる)は一般に糸球体由来を示唆するが、どれくらい見られたら有意なのか?アメリカ時代に自分で鏡検してなんとなく「半分あれば確実だけど」くらいのイメージだったのと、Mayoで検査技師をしてから医者になった研修医がいて「25%」といっていたのを勝手に信じ込ていたが、ふとしたきっかけを与えられて調べてみるとじつはこの問いについては一定した見解がないらしい。10-90%と幅がある(Nephron Clin Pract 2010 115 c203)。先月AJKDに尿沈渣のレビュー論文がでたが(AJKD 2016 67 954)、やはり施設ごとまちまちの基準を用いているとあり、「どんなに優れた眼を持った人が評価しても変形赤血球だけで糸球体か非糸球体かを決めることはできないと肝に銘じること」と結論づけられている。
日本はおおくの施設で検査技師さんのレポートを参照するため、日本腎臓学会の血尿ガイドライン(2013年)は日本臨床検査標準協議会 JCCLS 尿沈渣検査法指針提案 GP1-P4(2010)を載せている。これはhigh power fieldでみられたRBC総数あたりの糸球体型RBCの割合に応じて、30%くらいまで(ただし糸球体型RBCだけで5-9/hpf以上あること)が「少数」、60%くらいまでが「中等度」、それ以上が「大部分」と分けるそうだ。「赤血球形態情報は臨床側との協議に応じて記載する」と書いてある。検査室からオーダーした先生に「こんな赤血球が見えたのですが」とか「変形赤血球は中等度です」とかコールしている病院もあるのだろうか。また赤血球の粒度(テクスチャの粗さを表す程度)によって変形型、均一型に分けて表示する自動分析装置もあるが、これは参考と考えられているようだ。