未来の話としてここに書いてきた人工知能の爆発的発展と社会変容が、最近は肌身に感じられるようになってきた。こないだの「人工知能のほうが早く深く正確な診断をつけてくれる」というくだりが、現実化した。今朝の毎日一面トップはIBMのWatson(図)に2000万の論文を読ませて学習させたら難しい白血病の診断を10分でつけてくれ、患者さんに適切な治療がなされ助かったというニュースだ。AIの責任をとらなければならないし、Alpha Goが対局の一つでありえないミスするようにAIも完璧ではないから、医師がAIを監督する必要はある。AIを育てるエキスパートドクターも必要だ(AI科医とでも呼ばれるのだろうか)。しかし残りの、とくに外科以外の医師の仕事は確実に変わる。AI-guided medicineで、より正確な医療と、質の安全の確保と、癒やしの医療が提供できればいいと思う。
そんなときに「低形成腎と尿管瘤と原発性副甲状腺機能低下症と精神発達遅滞を合併する先天性疾患」をGoogleだの内分泌学会ページだのUpToDateだの小児腎の教科書だのでチマチマ調べるのは、もはやシュールでしかない気がしてくる(小児腎の教科書『小児腎疾患の臨床』は名著だけれど)。2000万もの論文は一生かかっても読めないし、私もWatsonにききたい。でも今ここにWatsonはいないので、調べている。CAKUTに副甲状腺機能低下症を合併するもので原因遺伝子がわかっているのはHDR症候群(GATA3遺伝子)、22q11.2欠損症候群(TBX1遺伝子など)。ただし前者はhypoparathyroidism、sensorineural deafness and renal diseaseの略で感音難聴を合併し、後者は胸腺機能低下や心奇形などを合併するという。