今回、AJKDからマラソンランナーと腎機能に関しての論文が出てる。(AJKD 2017)
今回この論文を検討してみる。
背景:
マラソンランナーは26.2マイル(=42.195km)を走り、高温環境などのストレス環境にさらされる。
マラソンランナーの腎機能障害発生に関しては不明確なことが多い。
2014年に米国で55万人のマラソンランナーをみている報告があるが、腎機能障害に関しては見落とされている事が多かった。
今回の研究は、マラソンランナーと腎機能障害の発生に関して多種のマーカーを用いて検討している。
患者:
2015年のHarfoldマラソン参加者で22歳~63歳で同意が得られた人。
Inclusionした人:BMI:18.5-24.9、少なくとも3年以上のランニング経験、少なくとも3年で週平均15マイルを走っている人。
Exclusionした人:レース前4か月以内にけがをした、4週以内にほかのレースに参加した、レーレース前48時間以内やレース後24時間以降にNSAIDsを使用、レース前8週以内にスタチンやステロイドや輸血を受けた、甲状腺機能低下や腎機能障害や冠動脈疾患、痙攣発作の既往がある人
検査:
尿と血液サンプルを3つのタイミングで測定。
マラソン開始前24時間(day0)、マラソン終了後30分以内(day1)、マラソン終了後24時間(day2)と3つのタイミングを見ている。
項目としては、血清クレアチニン、CK、尿中Alb、尿沈渣など
採血でマーカーも同時期に測定している。
マーカーに関しては6つの障害因子(IL-6、IL-8、IL-18、KIM-1、NGAL、TNF-α)、2つの回復因子(YKL-40、MCP-1)を測定。
検体提出に関して:
血液や尿の検体は冷凍してすぐにエール大学に2時間以内に搬送している。
尿沈渣に関しては採取後2時間以内に検査している。
アウトカムに関してはAKIを主要アウトカムとしてみている。
AKIの定義はAKINの分類基準に沿っている。
尿沈渣は腎尿細管上皮細胞や顆粒円柱の数で評価をしている。
結果:
今回22人のランナーが研究に参加。マラソンの日は16.7℃で26.2マイルを全員が完走した。
内訳は9人が男性で13人が女性。そのなかの1人がtype1DMで、6人が2週間以内にNSAIDsの内服をしていた。
バイタルに関してはマラソン直後の脈拍数の増加がみられた。
平均Creはday0:0.81、day1:1.28、day2:0.9であった。
その他の結果はCKに関してはday2でもピークアウトを認めていなかった。
沈渣に関してはday1から増加を認めていて、下記のような顆粒円柱の所見を認めていた。
尿中のAlbに関してもday1で増加を認めた。
各種マーカーに関しては下図で示すとおりDay1で上昇しday2で低下している。
結論:
マラソンに伴いAKIを来す可能性がある。
上記を考える際に考慮すべきこととして:
AKIの評価でCreだけではマラソンの場合に筋肉の崩壊や体液の移行などでも起こる事がありうる。そのため、今回尿沈渣やマーカーなどを用いた。マーカーに関しても最近の研究でマラソンに伴い上昇する事が報告されている。尿沈渣ではAKIの生じた原因がATNであったことを示唆している。健康な人にどのようにATNが生じたのか、構造的な研究はされていないため不明確ではある。
今回の報告はサンプルサイズが少ない点などのlimitationはあるが、マラソンランナーにおいてマーカーや尿沈渣をみた最初の研究であり今後の研究へつながればと考える。