2017年5月2日火曜日

アシドーシスの裏テーマ 2(PRAL、NEAP、NAE)

 動物の食餌にふくまれる酸を見積るDCADについて書いたが、人間の食事ではどうか?よく用いられる式がいくつかある。ひとつは、食事そのものの成分をみるRemerの式(J Am Diet Assoc 1995 95 791)だ。

0.49 x たんぱく[g/d] + 0.03 x リン[mg/d] - 0.021 x カリウム[mg/d] - 0.026 x マグネシウム[mg/d] - 0.013 x カルシウム[mg/d]

 で、S(たんぱく)・Pは酸でK・Mg・Caはアルカリという動物のDCADと同様の考え方だ。これをPRAL(Potential Renal Acid Load)と呼び、これを元にさまざまな食品がどれくらい身体に酸性、アルカリ性かをしらべることができる(ACKD 2013 20 141)。



 ただし、どのミネラルとタンパクをどれだけ食べたかを推計するのは手間で不正確だし、どれだけ吸収されているかもわからない。身体のなかで新たにつくられる酸もある(おもに有機酸)。じっさいにほしいのは、身体で1日につくられる(捨てなければならない)酸の量だ。

 そこで、ベルナールがいうように恒常性が保たれるならば「身体に入ってきた+身体のなかで新たにつくられた有機酸の量」と「排泄された酸の量」は同じでしょ、という前提を導入する。前者をNEAP(Net Endogenous Acid Production)、後者をNAE(Net Acid Excretion)と呼ぶ。健常人ならNEAPとNAEは同じで、身体に酸はたまらないはずである。

 NEAPをさきほどのPRALから求めるには、体表面積や体重で推定した有機酸(organic acid、OA)の量を足す。OA[mEq/d]は

41 x 体表面積[m2] / 1.73m2 または 体重[kg] x 0.66

 だ。あるいは、ふたつめのFrassettoの式(Am J Clin Nutr 1998 68 576)で食事のたんぱく量とカリウム量から以下のように推計する。

54.5 x たんぱく[g/d] / カリウム[mEq/d] - 10.2

いっぽうNAEは、尿からもとめる。

NH4+ + 滴定酸 - HCO3-

 しかし、24時間蓄尿しなければならず、またアンモニアやCO2が揮発しないよう工夫(油の膜を表面にはるとか)するのも手間だ。

 このように酸の1日摂取量・産生量・排泄量はそれぞれPRAL、NEAP、NAEとよばれ、体格と食事量、蓄尿などで算出できる。腎臓が正常な例で、いくつもの仮定をたててつくられた式ではあるけれど、最近はこれらの式と概念がCKD領域の疫学研究に用いられ、治療への応用も示唆されるようになってきた。つづく。