2017/05/12

残腎機能で補正したnPCR

 透析前HCO3濃度が低い群は、しっかりタンパクを摂っているからMICSになりにくく結局予後がよいのではないか、という米透析施設大手DaVitaコホートをつかった論文(以前にふれた)を2006年にだすなど、いわゆるreverse epidemiologyやMICSについて調べ続けているグループからまた論文がでた(doi:10.2215/CJN.13141216)。

 やはり対象はDaVitaのコホート、約3万6000人。以前にふれたタンパク摂取量の指標であるnPCRを、spKt/Vをもちいた透析分だけでなく残腎機能の分(rCLurea)も補正しnPCRdial+renalとした。これとアルブミンの値や死亡率との相関をみたところ、導入時のnPCRdial+renalが高い群(1.0g/kg/d以上)ほどアルブミン3.8g/dl以上を維持する割合が高く、死亡率も低かった。
 

 残腎機能を補正したnPCRdial+renalが高い群は低い群よりもspKt/Vがたかく(1.53にたいして1.66)、残腎機能がおおく(尿素クリアランス2.62に対して4.38ml/min/1.73m2)、タンパク摂取がおおいためかHCO3が低め(22.7に対して23.7mEq/l)でリンやHgbが高めだったが、これらを補正しても上記は有意だった。さらに透析開始6ヵ月後のnPCRdial+renal変化をみると、下がった群で死亡率がたかく上がった群で死亡率は低かった。



 きれいな結果だが、あらたな疑問がいろいろでてくる。

 残腎機能が残っているほどよい、という考えはCANUSAスタディとも通じる(以前にふれた)。利尿薬を使い続けたり、造影剤やNSAIDsを引き続き避けたほうがよいのだろうか。腎機能が残っているうちに透析したほうがいいのだろうか?KDIGOは透析患者さんに1.2g/kg/dのタンパク摂取を推奨するが、それでいいのか?食べられない人が食べるにはどうすれば?その原因(炎症をふくむ)をみつけて治してあげられれば一番だが…。

 栄養のお話は、ほんとうに、これからだ。楽しみでもある。