まず、2016年4月にメトホルミンとCKDに関して、FDAが勧告をだし、
・メトホルミン投与がeGFR<30mL/min/1.73m2の時は推奨されていない
・eGFRが、30-45 mL/min/1.73m2の時はメトホルミン開始は推奨されていない
・メトホルミン内服者が
>eGFR<45mL/min/1.73m2になった場合:利益と不利益を天秤にかけて判断。
>eGFR<30mL/min/1.73m2になった場合:メトホルミン内服は中止する。
という推奨になっている。
メトホルミンは1977年にPhenforminの投与が開始となり、メトホルミンは乳酸アシドーシスを危惧されながらもCKD患者さんに1944年に承認された。
まず、メトホルミンのCKDに対する研究を見ていくと
まずは、2017年度のAnnals of Internal Medicineのsystematic reviewがある。
詳細に関しては割愛はするが、moderateのCKD(eGFR30-60まで)に対するもので、メトホルミンの死亡率低下効果が示されている。この研究では、6つの研究で、うち1つは45未満のeGFRを含んでいる。
メトホルミンのCKDに対するSystematic review |
本題のDiabetes careの研究では、3つの研究が行われ、
1:CKDステージ1-5のメトホルミン投与量の研究:CKDステージには関係なく、メトホルミン投与量を下記のように増量していく。
2:CKDstage3A,3B,4に対する4か月のメトホルミン投与治療:下図のようなCKDstageによって決まった投与量を行い、血清メトホルミン濃度・乳酸HbA1c濃度測定
3:CKDstage3A,3B,4へのメトホルミン単回投与(500mgの投与)での薬物動態(0,0.5hr,1hr,2hr,4hr,6hr,8hr,12hr,24hrでフォロー)。
ものが行われた。
1では、下図のようにCKDのステージとメトホルミンの血中濃度には関連性があった。
2では、下図のようにメトホルミン血中濃度はFDA推奨の5mg/L以下に抑えられていた。
また、血中乳酸濃度も下図のようになっており、乳酸値2.5mmol/Lを超えるものもいたが、統計学的な有意差は認められていない。
3では、メトホルミンの血中濃度にCKDstageがかわっても統計学的な有意差は認めなかった。
まとめると、CKDのstageがあがればメトホルミンの血中濃度はあがるが、量をまもればとくに乳酸アシドーシスなどの発生は高くない(CKDstage4であっても)。
推奨として
CKDstage3では1.5g/日のメトホルミン投与を行い、腎機能の推移をしっかりと行い、乳酸値が5mmol/lを超えるようであれば中止し、2.5mmol/l以上であれば注意深く観察する。
CKDstage4に関しては、今後の前向き検討を行い証明していく必要はある。
この研究自体は単施設であるので、今後多施設や人種なども加味した研究をおこなえればいいなと感じる。
ただ、メトホルミンは非常に重要な薬であり、腎不全であってもしっかりと使えるようになればいいと考える。