2018年5月7日月曜日

腹膜透析(PD)における悩ましい点 ④

今回は腹膜炎に関しての話をしようと思う。
腹膜炎は単施設の研究で患者あたり0.06-1.66回起こすという報告がある(PDI 2011)。これは、多施設の研究(PDI 2011)での結果(0.60回/患者)よりも多いが、海外の報告では2人の患者で約1回の腹膜炎を起こすということになる。
日本では、発症率は低く2016年の報告では0.24回/患者あたりとなっている。

本邦でも非常に少ないが、腹膜炎はしっかりと認識しておく必要性がある。

腹膜透析における腹膜炎は、下記のように定義されている。

ここで、よく疑問に思うことを掘り下げてみよう。
1:細胞数のカウントは注液してどのくらいの時間での排液ならいいのか??
結論から言うと最低1〜2時間の貯留が必要になる。
貯留時間が短い場合には、細胞数は増えない場合も多いため、好中球の割合が重要になる場合がある。また、患者の症状もしっかりと確認する必要がある。

2:培養検査やグラム染色で起炎菌出ないと診断しちゃダメなの??
培養陰性の腹膜炎は20%ほどある。
そのため、そのことは念頭に置いておく必要がある!これが、今回の文章のキーコンセプト。

3:患者さんの排液が混濁していて、細胞数は2時間くらいして出るんですけど、治療は待ったほうがいいですか??
やはり数時間でも遅れると患者状態の悪化につながるリスクがある。
そのため、排液混濁があり腹膜炎が疑われる時点で初期治療を開始する。初期治療の際にIV(静脈内投与)かIP(腹腔内投与)なのかは施設によって異なるかもしれないが、基本的には初期治療はIVで投与をして入院加療後IP管理にする場合が多いのではないか。

下記は一つの治療例にはなる。


4:腹膜炎の治療期間はどのくらいですか??また、カテーテルを抜かなくちゃいけない時は?
治療期間は起炎菌によって異なる。重症化をしやすい菌を把握しておくと理解がしやすい。黄色ブドウ球菌、腸球菌、緑膿菌は重症化しやすく治療期間も3週間である。緑膿菌は作用機序の異なる2種類の抗生剤を使用することが推奨されている。
抜去に関しては、治療反応性が悪い場合はまずは抜去の対象と考える必要がある。下記が簡単にまとめたものになる。


細かな抗生剤などの選択や菌の詳細などは割愛する。

今回、培養陰性の腹膜炎について掘り下げる。
培養陰性腹膜炎の定義は、先の腹膜炎の定義の中で、培養検査が陰性のものである。
まず、培養陰性の原因として咲いたは検体の採取方法や培養方法が間違っていると言うものである。英国の報告でも10%程度の施設が適切な培養方法を用いていなかったと報告している。
細菌の種類によっても真菌、マイコバクテリウム、レジオネラ、カンピロバクター、ウレアプラズマ、マイコプラズマなどは培養陰性になりうる。
抗生剤の事前投与や化学性腹膜炎(イコデキストリン(PDI 2003)などによる)も培養陰性の原因になる。

ISPDでは20%未満に培養陰性腹膜炎の割合をするように推奨している
そのためには培養の採取方法・培養を行う際の遠心分離後の取り扱いなどに注意する必要がある。

培養陰性腹膜炎で起炎菌として、非黄色ブドウ球菌のグラム陽性菌が原因として考えられる。そのため、培養して72時間たって陰性であり、患者の状態が改善していれば(G+、G-の両方の治療をしている。)、グラム陽性菌飲みにターゲットを絞る抗生剤に変更し14日間の治療が推奨されている。
PDI 2010より
では、培養陰性腹膜炎は培養陽性腹膜炎に比べて予後はどうなのか?
これに関しては、様々な報告がありオーストラリアの435人の報告では、培養陰性の方が抗生剤の反応性、入院のリスク低下、カテーテル抜去率の低下、死亡率の低下に寄与していた。
同様にイランの1500人の大規模な報告では、6年と言う長期で見た場合に培養陰性腹膜炎の方が死亡率や腹膜炎離脱が低かったと言う報告がある。

まずは、培養陰性腹膜炎を見たときには、検査方法が間違っていないかを再確認して、また予後は比較的いいことも念頭に入れておく。