今回は題名どおり、「ショックとAKI」について考えていく。
まずは症例を一緒に解いて、そこから考えてみよう!
症例:
65歳女性
咳・発熱・低酸素血症でクリニックを受診。迅速検査にてインフルエンザA陽性であり、オセルタミビルの内服加療開始したが、症状悪化傾向認めたため救急外来を受診。そして集中治療室に高度発熱・胸部レントゲンでの多発性肺野陰影・挿管管理が必要な呼吸不全にて入院となった。
血液培養検査、気管支肺胞洗浄を施行→MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)が両方から検出
入院後経過:
2L(30ml/kg)の外液の補液加療と適切な抗菌薬加療にもかかわらず、低血圧が持続。右内頸静脈から中心静脈カテーテルを挿入。MAP(平均血圧):45mmHg、CVP(中心静脈圧):11mmHg、ScVO2(中心静脈酸素飽和度):89%、動脈血乳酸濃度:10.2mmol/l、尿量:10mL/hrであった。
質問:次に行うマネージメントとして適切なのはでどれだろう?
1:ノルエピネフリン投与と下肢挙上テストを補液反応性かどうかを見るために行う。
2:ドパミン投与を開始する。
3:CVPが12cmH2Oを超えるまで補液を継続し続ける
4:体液過剰による危険性があるため、患者は30mL/kgでの補液投与はすべきではないし、さらなる補液も必要ない。
5:ScVO2が70%を超えているので、組織酸素運搬は適切であり追加の治療は必要ない。
正解は 1
皆さんは正解にたどり着いただろうか?
少し、わからなかったよ〜という人のために、解説も交えて行こうと思う。
まず、ショックについて
ショックは循環不全をきたし、それに伴い組織循環不全、組織での酸素利用ができなくなる病態である。収縮機血圧<90mmHgやMAP<70mmHgの場合、いつもの血圧より40mmHg以上下がった場合などがショックと判断される。
ショックは4種類のタイプに分かれる。
・血液分布異常性ショック(Distributive shock)、循環血液量減少性ショック(Hypovolemic shock)、心原性ショック(Cardiogenic shock)、閉塞性ショック(Obstructive shock)
治療について
・まず、ショックの原因を把握することは重要。
治療の基本原則は細胞外液の補液を行い必要があれば血管作動薬を用いる。
モニタリングに関して
−CVP、ScVO2:敗血症性ショックの際にこれらを指標にして補液量を決定することはもはや推奨されていない(ARISE, ProCESS, ProMISe trialの結果から)。ScV02>85%と高いと予後が悪いことが示されている。→3と5は間違いであるとわかる。
−肺血管抵抗圧:有用性は示されておらず、逆にカテーテル関連感染の増加や不整脈や肺血管障害などを引き起こしうる。肺高血圧の時には検査の有用性は示唆されている。
上記のモニタリングとは異なり、補液反応性を見る方法はとても有益である。
補液反応性を見る方法として、動脈圧波形分析法(pulse contour analysis)、食道ドップラーや経胸壁ドップラー、バイオインピーダンス測定、PLR(Passive Leg Raising:動画)などがあり、最近の報告ではPRLが最もいい動体分析とされている。なので、1は正解!!
しかし、各々の検査はそれぞれに特有の限界があるということと、ショックにおける補液管理は全ての可能なデータを用いながら用いることが重要である。
血管に働く薬として、全身の血管抵抗を上げる血管作動薬と心拍出量を増加させる循環作動薬がショックの治療には用いられる。心原性ショックの場合には全身血管抵抗を低下させる薬剤が用いられる。(下図参照)
ノルエピネフリン(カテコラミンの1種)は敗血症性ショックでは第一選択で用いられる薬剤である。これは様々な研究やメタ解析によってノルエピネフリンはほとんど頻脈(ほとんどが心房細動)を起こさずに、ドパミンに比べて全死亡率を下げたという研究に基づいている。このことから、選択肢2は間違い。
バソプレシンはV1受容体を介して血管収縮を起こし、カテコラミンで反応しないショックに対して有用に働く。そのため、敗血症性ショックにおいてはカテコラミンを使用して第2に使用する薬剤であり、また、心臓血管手術後の血管拡張性ショックに有効な薬剤である。バソプレシンはカテコラミンに比べて心房細動をより起こしづらいという利点がある。バソプレシン使用で低ナトリウム血症が生じるか懸念があるかもしれないが、臨床研究では報告はされていない。VANISH trial(敗血症性ショックに対してバソプレシンとノルエピネフリンを腎機能をアウトカムとしてみたもの)では、バソプレシン使用群では腎代替療法の必要な頻度を減らしたが、さらなる研究が必要で、この結果があったとしても基本は現時点では敗血症性ショックに対してはノルエピネフリンが第一選択である。
アンジオテンシン2もバソプレシンと同様に非アドレナリン作用で血管収縮を生じさせる。本邦では承認されていないが、海外では血管拡張性ショックの有用性の報告から敗血症性ショックで使用されているようだ。ここの部分に関しては、非常にわかりやすいトライアルのまとめがあるのでリンクを貼っておく。
これらの血管に働く薬はMAP≧65mmhgを目標にして投与される。
このMAPのゴールに関しては、MAPを上げすぎた方がいいかということに関しては、研究(NEJM 2014)でMAP高くする事での有用な結果は出ていない。ただ、慢性的に高血圧のある人ではMAPの設定を高くした方が腎代替療法の必要な割合が減るという報告がある。ただし、心房細動の頻度も増えるというおまけ付きではあるが。。
今回はShockとAKIについて触れてみた。
絶対見なくてはいけない疾患であり、薬剤選択もぜひ復習していただきたい。
クマさんがおしっこしないで冬眠できるのも、じん臓が一日に体液の何十倍もろ過してから不要なものを残して再吸収するのも、じん臓の替わりをしてくれる治療があるのも、すごいことです。でも一番のキセキは、こうして腎臓内科をつうじてみなさまとお会いできたこと。その感謝の気持ちをもって、日々の学びを共有できればと思います。投稿・追記など、Xアカウント(@Kiseki_jinzo)でもアナウンスしています。
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2020/03/13
2020/02/28
Critical care nephrology 腎臓が悪くなるのを知るために。
今回から少しだけ集中治療と腎臓という視点で話していこうと思う。
最近良く耳にすることも多いCritical care nephrologyについて話していく。
この概念はイタリアのClaudio RoncoとオーストラリアのRinaldo Bellomoなどが集中治療領域に高頻度におこるAKIやESRDのことを指し、Intensivist・Nephrologistが手を取り合って治療していく必要性が有る。まだまだ、歴史の浅い分野であり日本での地位が確立している病院は正直少ない印象を受ける。
彼らの著書のCritical care nephrologyは必読のものである。2019年に改定されている。
はじめは集中治療とAKIを早期に認識することについて触れたいと思う。
最近の研究で、97施設1800人の集中治療患者で患者の57%が1週間以内にAKI(ステージを問わず)に進展したという報告があった。そのなかで、39%が重症AKI(KDIGO stage 2 or3)、13.5%が腎代替療法を必要とした。
集中治療領域でAKIになることは死亡率を上げるリスクファクターとして知られている。
腎代替療法を必要とするAKIの死亡率は40-55%といわれ、集中治療領域の心筋梗塞(20%)、AKIを伴ない敗血症(15-25%)、人工呼吸器を必要とするARDS(30-40%)の死亡率(カッコ内は死亡率)より高いというのは非常に驚かされる。
しかし、AKIにだれがなるか、AKIの人で腎代替療法が必要になるかはわからない場合が多いが、その中で患者のリスク層別化をすることは重要になる。
まず、このリスクの層別化でぱっと思い浮かぶのは以前にもお話したことが有るbiomarkerである。
しかし、このbiomarkerを使用する上で注意するべき点が有る。
それは、やたらめったらと取らないことである。
ん?どういうこと?なのかというと、検査前確率が高い人に行うべき検査であるということである。
その他に用いられるリスク層別化としては下表のものになる。
少し下に解説を入れていきたい。
1:Clinical risk prediction score
下記のスコアで5point以上であればAKIのリスクが高いと判断する。
2:Computer algorithms
これは今後AIが発達していく世の中になるであろうし、血中biomarkerよりも6時間以上早くAKIを予測したという報告も有る。
3:Furosemide stress test
高用量フロセミド負荷(1mg/kgのフロセミド負荷、もしくは投与してある人には1.5mg/kgのフロセミド負荷)をして、2時間尿を測定し200ml/2hrをカットオフとして判断する(感度87%、特異度84%)。
下記のスコアで5point以上であればAKIのリスクが高いと判断する。
![]() |
| NDT 2018より |
これは今後AIが発達していく世の中になるであろうし、血中biomarkerよりも6時間以上早くAKIを予測したという報告も有る。
3:Furosemide stress test
高用量フロセミド負荷(1mg/kgのフロセミド負荷、もしくは投与してある人には1.5mg/kgのフロセミド負荷)をして、2時間尿を測定し200ml/2hrをカットオフとして判断する(感度87%、特異度84%)。
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