2020/02/17

急性腎不全のマーカーについて、新規で報告されたsuPARとともにに考える。

今回、2015年にSuPARと慢性腎不全でNEJMに発表したグループからSuPARと急性腎不全という話題で論文が出た。
一つのことをしっかり続けていく重要性を実感する論文である。

急性腎不全に関しては様々なマーカーが有る。
NGAL、KIM-1、IGFBP7、TIMP-2

AKIのバイオマーカーに関しては浜松医大の安田先生の記事がとてもわかり易い。これに関しては必読するべきである。

CJASN 2015より引用
CJASN 2015より引用
上図はAKIのバイオマーカーについてまとまっている2015年の論文になる。

suPARは通常では様々な細胞(内皮細胞、足細胞、単球、リンパ球など)に僅かにしか発現していない。このsuPARの上昇が腎機能障害に関連することは様々な研究からも示されている(CJASN2018など)。


このsuPARの上昇とAKIの関連性を見たのが今回の話になる。

今回のものは、
患者:AKIとしては冠動脈造影後、心臓血管術後、集中治療患者を主に見て、
Outcom:suPARの血中濃度を用いながらprimary outcomeとして7日目の急性腎不全のリスク評価、secondary outcomeとして90日でのAKIと死亡をみている。

追加で行ったこと:ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ受容体(uPAR)に対するモノクローナル抗体が造影剤AKIのトランスジェニックマウスに対する効果を検討し、ヒト腎近位尿細管(HK-2)細胞に組換えsuPARを曝露させ、細胞のエネルギーの検証と活性酸素産生を検討した。

結果としては、下記になる。
4分位群(CAG後のAKIの割合をみてもの)に関してはModel3にいくほど、多変量解析になっている。その点でModel3の結果を見ると、Primary outcomeのsuPAR増加とAKIの発症の相関は認められた。
心臓血管術後、造影剤使用後も同様の結果が得られた。
NEJMより引用

また、野生株(Wild type)とsuPAR transgenic(ヒト腎近位尿細管(HK-2)細胞に組換えsuPARを曝露)株マウスで、造影剤(iohexol)投与したものと、造影剤+uPAR抗体を投与したものをみたものが、下表のものになる。
造影剤投与で悪化は認めるが、suPAR transgenic株では、尿細管拡張などが見られている。
造影剤+uPAR抗体では、suPAR transgenic株の尿細管拡張所見が明らかに抑えられている。
このことから、suPARを抑えることで腎障害が改善しており、過剰発現の際には腎障害になりやすいことがわかる。
NEJMより引用

今後、このマーカーが使われる日が来て、治療でuPAR抗体を使う時が来るのだろうか。抗体製剤なので、きっと高額であろう。AKI治療で改善をする可能性も高い中で、どこまでその治療をしていくのか?
まずは、AKIからCKDに移行しやすいリスクの層別化を行い、その後治療をというのが未来の治療なのかもしれない。