腎移植後の免疫抑制剤のときの血中濃度について腎臓内科医が考えることとして、
1:タクロリムスの血中濃度の定期的な測定は重要であり必要である。
2:Mycophenolate mofetil(MMF)の血中濃度は測定する必要性は低い
と考える場面が多いと言われていた。
実際、私も今まではこのように考えて診療をおこなってきた。ただ、違う施設にきてから2の血中濃度をしっかり測定していること(タクロリムスはトラフ濃度、MMFはAUC濃度)に非常に関心をして、今回の記事を書いてみようと思った。
今回の記事に関してはTransplantation 2019の論文が非常にまとまっており、この論文を中心に記載をしようと思う。
まず、薬物の話でありPKとPDを簡単に復習をしよう。
・PK(PharmacoKinetics):
投与された薬物がどのように吸収され、組織に分布し、代謝され排泄されるのかを解析している。
AUC24h:血中濃度時間曲線下面積:体内に取り込まれた薬の量を示す指標
Cmax:最高血中濃度
・PD(Pharmacodynamics):
薬物の作用部位における薬物濃度と薬物効果をみている。
MMFに関しては、当初は固定量をしっかりと投与(Fix dose)すればいいと考えられていたが、PKの点において、個体差がかなり大きいことが分かってきた。人によって10倍の差があると報告もされている。
なので、MMFに関してはTDM(Therapeutic drug monitoring)を行うことが良いとされている。とくにAUC 0-12h がいいのではと言われている。
では、一般的な薬において、固定量を投与したほうが良いか?AUCを測定し投与量を決定したほうが良いかに関しては、下記の図を見るとわかりやすい。
この図では、DrugA~Cは固定量、DrugDではAUC測定し量を決定が推奨されている。
理由としては、DrugDは非常にばらつきがある(投与量によっていい効果にもなりうるし、効果がなかったり毒性などの悪い効果もでる。)
→なので、DrugDなどは、TDMを測定しAUCなどを見る意義がある。
DrugA~Cは固定量でもいい(ただ、DrugBは量を多めにする必要があるし、Cは少なめにする必要がある)
このようにばらつきが多いものはTDMを行う必要性が有る。
前置きが長くなってしまったが、今回の論文は
1 MMFを投与することとAUC 0-12h の関連性
2 MMFを投与し、AUC 0-12h を行うことでの毒性の減少に寄与するかを検証している。
この2つに関して、過去の研究を検証している。
結論から書くと、
MMFのAUC 0-12h は薬剤効果を知る上で、投与量よりも有用なマーカーになりうる。ただ、AUC 0-12h をやることのデメリットとしては採血の回数の多さと入院が必要になることである。
MMFを固定量で投与することによって、薬剤過量や過少になったり、毒性を誘発するリスクは高くなる。
なので、基本的にはMMFに関してはAUCを行いう薬剤の調製を行う必要がある。
今回のことを踏まえながら、僕の診療も少しずつ変えていければ良いなと思う。