Q1:とりあえず、どうしますか?
外来・救急室で抗生物質くらいよく聞かれるであろう、点滴のお願い。点滴に益はあまりないが、害もあまりない(抗生物質とちがって耐性菌が増えるわけでもない)から、このようにバイタルに問題のない症例でも、お願いを叶えてしまいがちだ。
また、血液検査をオーダしたあと看護師さんから「輸液もつなげますか?」と聞かれることもあるだろう。静脈路が必要なら採血と一緒に取ったほうが便利だし、患者さんも痛くない。
しかし、残念ながら「とりあえずの輸液」にも害がないわけではない・・(なお、1Lの輸液が生死を分けるかもしれない話として、他にSALT-EDスタディも参照されたい)。
Q2:以下ですが、どうしますか?
Na 122mEq/l(←138mEq/l)
Cr 1.8mg/dl(←1.0mg/dl)
Q1で低張の維持液を選択したなら、いまごろ低Na血症を増悪させているだろう。AKIを合併しており、食思不振・体液量減少にともなう腎前性を疑いたくなる。では、高張の細胞外液を輸液すればよいだろうか?
Q3:以下ですが、どうしますか?
体重 52kg(←49kg)
診察 下腿浮腫あり
BNP 1000pg/ml(←100pg/ml)
よく診ると、もともと本例には心不全の既往があり、食べなくなったのは(ウイルス感染による)心不全増悪のため悪化した、咳のためだった。AKIも同様に、腎うっ血にともなうもの(+RAA系阻害薬の影響)と考えられる。
だから細胞外液を輸液することは、患者に害になると考えられる。RAA系阻害薬を中止して利尿薬を点滴するのが適切だろう。結果、咳はおさまり、体重・Crもベースに戻り、食事が摂れだし、低Na血症も改善した。
そもそも最初からよく話を聴いて診察していれば、こうはならないのだが・・。忙しい診療では反射的に対応してしまうこともある。大切なのはフォローして考えなおすことだと、痛感する。そしてそれこそが、医師が「点滴屋さん」と違うところなのだと、信じたい。