pH 6.80
pCO2 29Torr
HCO3 4mEq/l
Q1:アシドーシスは、代謝性ですか?呼吸性ですか?
呼吸数が多いときには、過換気症候群や呼吸不全だけでなく、代謝性アシドーシスの呼吸性代償(二次性変化)も疑う必要がある。アドルフ・クスマウル先生(1822‐1902、写真)が糖尿病性ケトアシドーシスの症例で報告したことでもお馴染み、Kussmaul呼吸だ。
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本例も、著明な代謝性アシドーシスがあり、pCO2も正常範囲から下がっているので、呼吸性代償が起きていると思われる。しかし、代償が不十分なことは、あまりにも低いpHからも明らかだ。
代償で期待されるpCO2は、ウィンターの式をつかえば14Torr(4×1.5+8)。ΔHCO3とΔpCO2との関係から求めても、16Torr(40-20×1.2)であり、それ以上にpCO2がたまっている。このことから、呼吸性アシドーシスも合併している。
Q2:アニオン・ギャップは開大していますか?いませんか?
Na 144mEq/l
K 4.4mEq/l
Cl 104mEq/l
Alb 4.7g/dl
アニオン・ギャップは、Na+ClーHCO3とすれば、36mEq/lで開大している(カリウムを含める方もいる;低アルブミン血症はないので、その補正は不要だ)。ΔAGは24、ΔHCO3は20だから、ほぼAG開大代謝性アシドーシスといってよさそうだ(こちらも参照)。
pHが7未満でショックも心肺停止もない、意識障害を伴う、AGの著明開大・・。なにか飲んだのだろうか?患者に聞いても、答えてくれない。様子を知る付き添いの方もいない。酒臭くもない。中毒に詳しい救急スタッフもいない。狭める方法はないか。
Q3:浸透圧ギャップは、開大していますか?いませんか?
BUN 23mg/dl
血糖 197mg/dl
血清浸透圧(実測) 366mOsm/kg
計算してみよう。予測される血清浸透圧は、327mOsm/kg(144×2+23/2.8+197/18)。したがって、実測浸透圧とのあいだに、39mOsm/kgのギャップがある。
アニオンギャップと浸透圧ギャップがどちらも開大する物質として代表的なのは、メタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなどだが・・。
Q4:これ、どういうことですか?
尿馬尿酸 1.29g/l
つづく。
(hippoはギリシャ語ではウマ、英語ではカバ) |