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2022/03/06

これは尿細管障害ですか??

すごく久しぶりの投稿になってしまってすみません。

この記事を書いている時は、コロナ感染も多い状況で皆さまも本当にお忙しい時期だなと思っています。何年後かに、この時の記事を見て、そんな忙しい時期もあったんだなと振り返れればなと思っています。


腎機能障害とどのように判別していますか?

多くは血清CrからのeGFRを用いて判断していると思います。CKD評価に用いられる尿Alb/Cr比も用いることはありますが、これらの評価は糸球体の障害などを反映している場合が多いとされています。

既知のように糸球体の障害だけが、決して末期腎不全の予後に関わっているわけではないです。


尿細管間質の障害や繊維化も腎不全の予後に関連していることが知られています。ただ、この部分の障害は腎生検によって確定診断される場合が多いと思います。しかし、腎生検ができない症例もいて、尿細管間質障害の判断に血清や尿中バイオマーカーが何十年もの間研究されています。

今回は、AJKD2021の論文が非常によかったので、それを踏まえてまとめたいと思います。


皆さんは、このバイオマーカーを日常臨床でどのように使用していますか?主には、疾患の診断や予後予測、治療適応の可能性の決定に用いられると思います。



尿細管バイオマーカーは2つのカテゴリーに分かれます。

・組織障害や修復を直接的に反映するバイオマーカー

 ーKIM-1(kidney injury marker-1)、EGF (Epidermal Growth Factor)、MCP-1(Monocyte Chemoattractant -1)など

・尿細管細胞に関与するものを測定するバイオマーカー

 ーα1-マイクロアルブミン(A1M)、馬尿酸、ウロモジュリンなど

このバイオマーカーに関しては、AJKD 2021/5の論文でも触れられています。


尿細管マーカーに関しては、2018年にSPRINT試験のコホートデータを用いて、978人のeGFR<60mL/min/1.73m2の参加者に対してみているものがあ理ます。この研究では、8つの尿中バイオマーカーをみていますが、厳密に血圧コントロールを行なった群でeGFR低下が認められたが、尿中バイオマーカーに関してはeGFR低下があるにも関わらず増加はしませんでした。また、これはACCORD試験のコホートデータでも同様の結果でした。


尿中マーカーに関しては一つの尿中バイオマーカーを使用しての診断意義や予後予測に関しては難しいとされています。ただ、複数のマーカーを用いることで意義が出る可能性はある可能性があるとされています。


なかなか使い分けが難しく、今後も臨床にどのように生かせるかを考えながらおこなえるようにしていきたいと思っています。





2020/02/17

急性腎不全のマーカーについて、新規で報告されたsuPARとともにに考える。

今回、2015年にSuPARと慢性腎不全でNEJMに発表したグループからSuPARと急性腎不全という話題で論文が出た。
一つのことをしっかり続けていく重要性を実感する論文である。

急性腎不全に関しては様々なマーカーが有る。
NGAL、KIM-1、IGFBP7、TIMP-2

AKIのバイオマーカーに関しては浜松医大の安田先生の記事がとてもわかり易い。これに関しては必読するべきである。

CJASN 2015より引用
CJASN 2015より引用
上図はAKIのバイオマーカーについてまとまっている2015年の論文になる。

suPARは通常では様々な細胞(内皮細胞、足細胞、単球、リンパ球など)に僅かにしか発現していない。このsuPARの上昇が腎機能障害に関連することは様々な研究からも示されている(CJASN2018など)。


このsuPARの上昇とAKIの関連性を見たのが今回の話になる。

今回のものは、
患者:AKIとしては冠動脈造影後、心臓血管術後、集中治療患者を主に見て、
Outcom:suPARの血中濃度を用いながらprimary outcomeとして7日目の急性腎不全のリスク評価、secondary outcomeとして90日でのAKIと死亡をみている。

追加で行ったこと:ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ受容体(uPAR)に対するモノクローナル抗体が造影剤AKIのトランスジェニックマウスに対する効果を検討し、ヒト腎近位尿細管(HK-2)細胞に組換えsuPARを曝露させ、細胞のエネルギーの検証と活性酸素産生を検討した。

結果としては、下記になる。
4分位群(CAG後のAKIの割合をみてもの)に関してはModel3にいくほど、多変量解析になっている。その点でModel3の結果を見ると、Primary outcomeのsuPAR増加とAKIの発症の相関は認められた。
心臓血管術後、造影剤使用後も同様の結果が得られた。
NEJMより引用

また、野生株(Wild type)とsuPAR transgenic(ヒト腎近位尿細管(HK-2)細胞に組換えsuPARを曝露)株マウスで、造影剤(iohexol)投与したものと、造影剤+uPAR抗体を投与したものをみたものが、下表のものになる。
造影剤投与で悪化は認めるが、suPAR transgenic株では、尿細管拡張などが見られている。
造影剤+uPAR抗体では、suPAR transgenic株の尿細管拡張所見が明らかに抑えられている。
このことから、suPARを抑えることで腎障害が改善しており、過剰発現の際には腎障害になりやすいことがわかる。
NEJMより引用

今後、このマーカーが使われる日が来て、治療でuPAR抗体を使う時が来るのだろうか。抗体製剤なので、きっと高額であろう。AKI治療で改善をする可能性も高い中で、どこまでその治療をしていくのか?
まずは、AKIからCKDに移行しやすいリスクの層別化を行い、その後治療をというのが未来の治療なのかもしれない。