2020/03/03

Critical care nephrology ~敗血症とAKI~

少し症例も提示しながらCritical care nephrologyで遭遇しやすい疾患を見ていく。

症例1
高血圧の既往が有る68歳女性が、発熱・嘔吐・混迷で救急外来に受診。
来院時バイタル:体温 39.3℃、血圧 130/59 mmHg、心拍数 98回/分、呼吸数 26回/分、SpO2 92% (室内気)
身体所見:指示に従えない、右CVA叩打痛あり
血液検査:WBC 2200/μl、Cr 2.3mg/dL (Base line 0.7)、尿白血球数 >50/視野以上
画像検査:非造影腹部CT検査 結石などなく大きな問題なし
ICUに入院となった。

質問:患者のAKIの原因で最も正しいのは?
A:血流量低下に伴う虚血性急性尿細管壊死がAKIの原因である
B:敗血症の定義に入らないため、AKIの原因は敗血症ではない
C:血圧が正常なため、AKIの原因は敗血症ではない
D:AKIになることで入院中の二次性の感染リスクが増加する。
E:敗血症によるStage 3のAKIであるため、準緊急の腎代替療法が適応になる前に腎代替療法をしたほうが利点が大きい。

いかがだろうか?

ここでの正解はD

少し解説も兼ねてこのAKIを紐解いていければと思う。

・まず、ICUの場面ではどのようなものが一般的にはAKIを引き起こしやすいのか?
→敗血症、心臓手術、急性肝不全、腹部コンパートメント症候群、肝腎症候群、悪性腫瘍、心腎症候群 などがあげられる。

まとめた表を下記に示す。
AJKD2020より

今回の症例では、腎盂腎炎による敗血症が病態としては疑われる。

敗血症:
敗血症に関してはSepsis-3(JAMA2016)によると
「感染症に対する制御不能な宿主反応によって引き起こされた、生命を脅かす臓器障害で、臨床的にはSOFA score 2点以上」で定義される。
(ICU外ではqSOFAで2点以上:①呼吸数が22回より多いか?②収縮期血圧が100mmHg未満か?③意識変容をみとめるか?を各1点としてみている。)
(ICUではSOFA scoreでみている。)

今回の症例ではqSOFAで呼吸数異常、意識変容があり敗血症の定義を満たすためBの選択肢は不適当である。

敗血症でAKIになることは適切な治療や介入をしない場合に、死亡や慢性腎不全に至る可能性も高い疾患である。それを、わかりやすく示したものが下記の図になる。

KI 2019より引用

では、なぜ敗血症でAKIになるか? これについては正確にはまだわかっていない。

以前は、AKIになる理由として、循環不全になり、急性尿細管壊死(ATN)を起こすことによると考えられていた。
しかし、動物実験では腎血流量は敗血症では低下しない事がわかっている。また、敗血症性AKIで亡くなった人の剖検でもATNを起こさず比較的腎臓の組織は保たれていた。

敗血症性AKIは血圧低下がなくても生じうる。(選択肢Cが間違いであるとわかる)

敗血症性AKIの機序については、下記の機序が言われている(図参照)。
・1つ目は血管に関する機序であるが、シャントができることによって糸球体への血流量が低下する。

・もう一つは炎症に伴う機序である(①~③の順に進んでいく。)
①敗血症ではDAMPs/PAMPs(Damage associated molecular pattern/Pathogen  associated molecular pattern)が敗血症では産生され(DAMPs/PAMPsは組織損傷や微生物侵入の痕跡を示す)、糸球体を通過する。

②通過したDAMPs/PAMPsは尿細管上皮に有るTLR(Toll-like receptor)にくっつき、サイトカインや活性酸素(ROS)や酸化ストレスや内皮活性化を起こす。内皮活性化によって白血球や血小板の移動を生じさせ、血栓形成や血流を停滞させる。また、グリコカリックスの障害や凝固カスケードの亢進が生じる。

③尿細管上皮細胞の傍分泌(paracrine)によって、尿細管細胞のアポトーシスを避けるために細胞活動性を停止させ、最終的にはTGFフィードバック(尿細管糸球体フィードバック)を介して、輸入細動脈の収縮を起こし腎血流量を低下させる。
KI 2019より引用
はっきりとしていない部分も多い。
ただ、Septic-AKIは単純な血流低下に伴うATNではないということの認識は重要である。
(Aは異なる選択肢とわかる。)

治療に関して
適切な時期の抗生剤投与、原因コントロール、適切な体液管理は敗血症患者の予後を左右する上で重要である。
透析を早期にしたほうが良いか?に関しては、下記の研究をみていただければと思う。
ELAINでは早期に透析をしたほうがいいという結果は出たが、その他の2つの研究では早期の透析導入の優位性を示すデータはない(以前に投稿)。
なので、現状ではSeptic AKIの場合でも緊急透析導入の適応を前倒ししてまで緊急透析を導入する根拠はない。(選択肢Eは間違いとわかる)
AJKD2020より

今回は、Septic AKIの内容だけになってしまったが、少しこのような形でCritical care nephrologyを振り返れればと思う。