2020/03/18

少し時代に乗って ~COVID-19と腎臓 part1 ~

現在日本や世界でも新型コロナウイルス(COVID-19)がとても騒ぎにはなっている。

一般診療においても様々な情報が飛び交っていると思う。
個人的にはプライマリ・ケア学会の資料(添付)はよくまとまっているのではないかなと思う。これから、様々な合併症の報告も出てくるのかもしれない。
また、英語の資料では様々なものが出ているがACPの資料がいいかもしれない。また、CRITICALCARE NORTHAMPTON.COMのサイトは非常に色々な情報がまとまっているのでとてもわかり易い。

あとは、Hopkinsが出しているCOVID-19のMAPなどは非常に見やすいので現状を把握する上では非常に理解がしやすい。

まずは、一般的な情報を簡単におさらいをしていこうと思う。
以前2003年に流行したSARSや2012年に流行したMERSも今回と同じコロナウイルスで有るということは既知の事実であろう。下図はそれらをまとめたものになる。

下表は一般的なCOVID-19の症状になる。
やはり発熱の割合が多い。


下表はCOVID-19の採血検査になる。
白血球上昇は少なく、血小板はやや低下する。その中でリンパ球は減少している。LDH上昇とCRP高値、CK高値などがある。プロカルシトニンは正常で肝機能は30%の患者で上昇する。

ここからは、腎臓という観点からもちろん見ていこうと思う。
まだまだ分かっていない部分も多いとは思うが分かってる範囲で記載をしてきたいと思う。

COVID-19感染と腎臓
まずは、AKIの発生についてみていく。
以前のSARS、MERS(両者ともコロナウイルス)でのAKIの発生率は5-15%であったと報告され、ただ、AKIにまで至った例では60-90%と高い致死率が報告されていた。
それに比べると、まだ報告は十分ではないがCOVID-19でのAKI発生率は3-9%であり多少前者より下がる(JAMA2020)。

COVID19とAKIリスク

しかし、最近の報告では、感染者の中で血清Crが15.5%の患者で増加し、また14.1%でBUNが上昇したと報告がある。また、最近の報告でCOVID19で入院した710人の患者で、入院時にタンパク尿+血尿が44%に認められ、26.7%に血尿だけ認められたという。

ここまでのまとめ:
現段階ではAKIになるリスクはあり。発生率ははっきりはしていないが感染患者の10%前後。ただし、AKIになった場合は非常に死亡率が高くなる。
COVID19とmortality

AKIの原因は?
明確になっていない部分が多いが、多臓器不全やショックと共に起こることが多く、急性尿細管壊死(ATN)が一番の原因と考えられる。
2005年のSARSのときには横紋筋融解症も少ないが報告されていた。

治療に関しては?
基本的には対症療法となる。AKIに関してもまずは血圧コントロールをおこない、体液管理も行い、必要時に腎代替療法を開始する。

現在出ている治療に関しての報告:
・現在、RamdesivirのTrialが中国で開始され、2020年4月には終了するというから驚きである。この薬は抗ウイルス活性を有する開発中の核酸アナログ薬になっている。
・リン酸クロロキンが中国の他施設研究でCOVID19関連肺炎に対して有効だったという報告も有る。
報告によっては血液灌流(Hemoperfusion)がサイトカイン除去に有効に働いたのではないかと言われている(6L/hrの大量の血液灌流が敗血症患者の炎症性サイトカイン(IL-6)などの除去に有効だったという報告による)。
・ステロイドに関してはSARSの際のメタアナリシスからも、ステロイド投与による利益よりも害のほうが多いということが報告されている。そのため、COVID-19でも推奨はされていない。
・COVID-19に罹患したが回復した人の血漿を投与することで臨床症状の改善を認めたあという報告があり、中国では現在他施設RCTでこの研究が進行中である(NCT04264858)。
・モノクローナル抗体であるトシリズマブがCOVID-19感染に有効かを中国では他施設RCTで行われている(ChiCTR2000029765)。
・また、COVID-19はACE2の受容体に結合する特性があり、その点でACE-IやARBは有効かという議論が有るがこれに関しては結論が出ていない。

治療のまとめ
まだ色々な情報が出ているが確固たるエビデンスのある治療はない。

次回はCOVID19と透析や移植について少し触れたいと思う。

現在色々と活動にも制限がかかる中、日々診療にあたっているみなさんも体調にはぜひ気をつけてください。