出題者:生活習慣病等の厚生労働大臣が別に定める疾患を主病とする患者について、プライマリケア機能を担う地域のかかりつけ医師が計画的に療養上の管理を 行うことを評価したもので、厚生労働大臣が定める疾患を主病とする患者に対して、治療計画に基づき、服薬、運動、栄養等の療養上の管理を行った場合に、月2回に限り算定できるのは・・・
回答者:「特定疾患療養管理料(ただし許可病床数200 床以上の病院においては算定できない)」!
出題者:ですが、カリウム摂取で血圧が下がるのはなぜでしょう?
回答者:・・・。
カリウム摂取と血圧の関係は疫学で証明され(NEJM 2014 371 601)、クリニックで高血圧の患者さんに「野菜を摂りましょう」といえば上記加算も取れるだろう。しかし、そのメカニズムはどうか?
アルドステロンなどさまざまな要素が関与しているので全貌は分かっていない。ただ、米国腎臓学会の小部屋でおこなわれたWNK(以前も何度か紹介した)セッションに出て、遠位尿細管の間質側にあるKirチャネルがWNKを制御しているらしいことがわかった(写真は辛口白ワインに甘いカシスリキュールを加えたフランスうまれのカクテル、Kir)。
Kirチャネルはカリウムチャネルで、irはinward rectifying(細胞内への一方通行)の略だ。脳で発見されて(初期論文のひとつはNature 1993 362 127)以来、多くのスーパーファミリーが見つかり、さまざまな場所で発現していることがわかっている。
腎臓もそのひとつで、たとえば有名なROMKはKir1.1だ。遠位尿細管の間質側にはKir4.1(遺伝子KCNJ10)とKir5.1(KCNJ16)でできたヘテロ4量体があり、これが血中カリウム濃度を感知していると考えられている。そして、血中濃度がたかいとNCC発現が下がり(下図紫線、JASN 2017 28 1814)、ナトリウム再吸収が落ちる。
Kir4.1遺伝子を腎臓に限りノックアウトするとどうなるか?Kir5.1のヘテロマーはカリウムを通さないこともあり、カリウムセンサーの働きが失われる(上図赤線)。なぜ腎臓に限りノックアウトするかというと、けいれんを起こしてしまうからだ。
この遺伝子異常はヒトでも知られており、EAST症候群(Epilepsy, Ataxia, Sensorineural deafness, Tubulopathy)と呼ばれる(NEJM 2009 360 1960)。NCC発現が減るのでGitelman症候群に似て低K血症、アルカローシスをきたす。
Alport症候群(治験の話はこちら)、Pendred症候群、ループ利尿薬、シスプラチン、アミノグリコシドなどほかにも耳と腎臓に影響する疾患はあるが、EAST症候群もそのひとつとして覚えておきたい。
Kir5.1をノックアウトすると、Kir4.1のホモ4量体はヘテロ4量体と異なりpHに関わらず恒常的にカリウムを通すので、NCCが過剰発現になる(JCI insight 2017 2 pii92331)。その結果、Gitelmanのミラーイメージ、FHHt(Gordon症候群)にちかい病状となる(整理されたものはこちら)。
さらに、間質側のKirが、どうやって反対側(内腔側)のNCC発現を制御しているのかについての話もあった。下図(PNAS 2014 111 11864)にあるように、細胞内クロール濃度、SPAK、KS-WNK1などが関与しているようだが、それはまた。
遠位ネフロンのイオンチャネル研究といえば、もとは腎臓内科の花形(いまは、近位尿細管や腸管のほうが流行りではあるが)。高血圧の健康と社会への影響の大きさを考えても、今後の発展と応用が期待される。