2017/04/17

近位尿細管はいま

 ネフロンで治療のターゲットになってきたのは主に遠位だ。そこが最終的なファインチューニングを行うので調節するのにちょうどよいからと思われる。いっぽう、再吸収のほとんどを担当し、腎臓でもっともエネルギーを消費するところでもある近位尿細管は調節するには難しい。近位尿細管で脱炭酸酵素を阻害するアセタゾラミドも利尿薬として使い勝手のよい薬ではない(代謝性アルカローシスで利尿薬を切れないときの最後の手など)。

 しかし、近位尿細管というフロンティアも研究でさまざまな標的分子がみつかっているからこれから薬ができるかもしれない。たとえば最近Kidney NewsのDetective NephronにeDKAが取り上げられた(エピソード18)SGLT2阻害薬は近位尿細管がターゲットだ。近位尿細管は尿酸の再吸収もおこなっているから、昔からあるベンズブロマロンにかわるあたらしい再吸収阻害薬なんかも開発されるかもしれない。

 という流れで読むと興味深い論文が、JASNにでていた(doi;10.1681/ASN.2016080930)近位尿細管でのHCO3-吸収はreclamationと呼ばれ、再吸収と呼ばれない。HCO3は、直接再吸収するのではなく、内腔の脱炭酸酵素によってHCO3がCO2になって細胞内に入り、それが細胞内の脱炭酸酵素CA2によってHCO3になり、NBCe1から身体に入る(いっしょにできるH+は尿に排泄されアンモニアやリン酸にバッファーされる、図は論文から)。




 論文では、上記の過程と別に、ろ過されたHCO3の15%程度は新しく見つかったNa/HCO3共輸送体であるMCDL-NBCn2を介して直接尿細管細胞に再吸収されているかもしれないという仮説を、数学的には証明した(図、論文から)。Na/HCO3共輸送体は何種類もあるから闇雲にブロックするわけにもいかないだろうが、近位尿細管の生理学が新たにわかることで新しい治療につながることを期待したい。





 [2017年6月追加]本文で予言した、URATに働きかける新しい尿酸降下薬は、実在する。Lesinurad(商品名Zurampic®)がそれで、URAT1の阻害薬だ。第3相試験で、Febuxostatとの併用群(400mg/d)がFebuxostat単独より尿酸値をさげ、痛風結節を縮小した(DOI:10.1002/art.40159)。200mg/dでは尿酸値の追加効果に有意差がなかった。やはり、近位尿細管はフロンティアだ。