2017/04/25

腎機能障害のある若年男性を見て(MGH caseより) ② 解答編

前回の投稿後で皆さん自分の考えはまとまっただろうか?


この症例は若年男性で入院22日前は腎機能も正常であった。入院15日前にはCr:1.7まで上昇し、ネフローゼ症候群・低アルブミン血症を呈していた。


ここでの問題点は
1:ネフローゼ症候群
2:急性腎機能障害
3:腎腫大

が重要な問題となる!

1:ネフローゼ症候群
ネフローゼ症候群は3.5g/day以上のタンパク尿・アルブミン低下(3.0g/dl以下)・末梢浮腫の基準に当てはまるものである。
ネフローゼ症候群では脂質異常症(生成と排泄の障害)、凝固異常などをきたすのは周知のことである。
ネフローゼ症候群をきたすものを考えるときに一次性なのか?二次性なのかを常に考える必要がある。
 一次性:微小変化群、巣状糸球体硬化症(FSGS)、膜性腎症などが鑑別に上がる。
 二次性:糖尿病性腎症、アミロイドーシス、ループス腎炎(V型や足細胞障害のあるパターン)などの全身性疾患が原因のもので生じやすい。

ただ、ポイントとしてあまりネフローゼ症候群と急性腎機能障害を合併することは少ない!

2:急性腎機能障害
急性腎機能障害に関しては、この症例ではKDIGOガイドラインでstage 2のものである。
ネフローゼ症候群で急性腎機能障害を共に呈する場合には、低血圧・敗血症・腎毒性物質投与などを伴っている場合を考える。また、一番多いのは微小変化群に伴う急性尿細管壊死(ATN : acute tublar necrosis)であり、腎生検した症例の25%にみられた。このATNを起こした患者は高齢で動脈硬化の進行した症例であった。そのため、若い症例ではきたすことは少ない。
また、先に述べたようにネフローゼでは凝固異常を呈し腎静脈血栓などは一つ注意をする必要がある。特に膜性腎症で多い(KI 2012)!しかし、両側の腎静脈血栓は鑑別には上がるが頻度は低い!
アミロイドーシスでは、骨髄腫のある患者の一部に円柱腎症(cast nephropathy)を呈する。
しかしこの症例では考えづらい(若年すぎて骨髄腫の合併の可能性低い)
NSAIDs使用により急性間質性腎炎(AIN : acute intestinal nephritis)を生じうる。この症例ではNSAIDsはアレルギーもあり使用してもいない!

collapsingのFSGSではAKIとネフローゼ症候群の合併は見られうる。

なので、まずAKIとネフローゼ症候群を見た際に鑑別としては、、
・微小変化群+ATN
・膜性腎症+両側腎静脈血栓
・アミロイドーシス+円柱腎症
・微小変化群+AIN (2つともNSAIDs使用による)
・Collapsing FSGS
となる!!

次回は、さらに鑑別を進めていく!