2017年4月21日金曜日

近位尿細管とアンモニア 3

 近位尿細管でつくられたNH4+は、まずミトコンドリアから細胞質にでるが、その通過にアクアポリン8が関与すると考えられている。アクアポリンといえば水チャネルだが、水のように小さくて電気的に極性のある分子は通す。ただしアクアポリン8遺伝子を削除しても尿中アンモニア排泄はかわらない報告もあるから、ほかの仕組みもあるのかもしれない。

 細胞質にでたNH4+が内腔に排泄されるにあたっては、細胞質と内腔の細胞膜にいくつかの調節の仕組みがある。まず細胞質にはNH4+をグルタミンにもどすglutamine synthetaseという酵素があってNH4+の排泄にブレーキをかけている。この酵素を削除した実験などから、アシドーシスのときにはこの酵素の活動が低下していると考えられる。

 細胞膜をどう越えて内腔にでるか?じつは正確にはわかっていない。以前はアンモニア分子が拡散すると考えられていたが、現在はNa+とH+を交換するNHE3チャネルがH+のかわりにNH4+を通すというのが通説だ。アシドーシスで近位尿細管のNHE3発現量が
ふえて、それにはアンジオテンシンII(AT1を介した)、エンドセリン1(エンドセリンB受容体を介した)がかかわっていることがわかっている。

 ただしNHE3遺伝子を削除しても尿中アンモニア排泄はかわらない(が、Na+再吸収がおちて血圧を保てない。10.1016/j.kint.2017.02.001)。ほかのチャネルを介しているのだろうか。たとえばK+チャネルは、NH4+とK+の流体力学半径が1.14オングストロームで同一で荷電も1価だからNH4+を通す。近位尿細管にはKCNA10、KCNQ1/KCNE1、TWIK-1などたくさんのカリウムチャネルがあって、基底側のNa+/K+-ATPaseだってNH4+を通す。これらを無差別に阻害するバリウムイオンで近位尿細管のアンモニア輸送は止まる。もっとも実験ではNH4+の排泄ではなく再吸収が止まった。
 
 じつはNH4+を通せるチャネルというのはたくさんある(アクアポリン1とか)。渋谷駅の交差点(写真)のような複雑な流れを一本の矢印で説明(図)できるのはすばらしいことだが、これからこの領域の研究がすすむと生理学の理解が変わるかもしれない、と思ったりする。




 
 おまけ:NHE3阻害薬Tenapanorのことを以前に書いた(便中のNa・P排泄をふやし透析患者さんでリン値をさげた)ので参照されたい。