2017/07/26

がん患者の急性腎不全 6

今回は前回の続きで、抗がん剤とAKIについての実践的な内容について触れたいと思う。
少しでも知識の片隅に置いてもらえたらうれしいと感じる。


まとめるとNEJMの下記の表と図がとてもみやすい。(NEJM 2017



上記を文章にまとめてみる。
★細胞障害性抗がん剤では
・シスプラチン:直接的に尿細管障害を生じ、ATNを生じる。また、Salt wastingを生じ低ナトリウム血症になったり、マグネシウム排泄が亢進し、低マグネシウム血症もきたす。低クロール環境が毒性の増悪を生じるため、投与前に生食投与を行い尿量を維持する事は重要である。1/3が治療後数日でAKIになる。また、反復投与で悪化しやすい。


・カルボプラチン・オキサプラチン:シスプラチンと同様の白金製剤ではあるが、尿細管障害は生じる頻度は低い。


・イフォスファミド:シクロフォスファミドと同様なアルキル化剤。30%程度にAKIを生じる。近医尿細管障害を生じ、尿糖・低カリウム血症・低リン血症・近医尿細管アシドーシスを生じる。重度な症例ではFanconi症候群を呈する。CKDがある症例やシスプラチン投与歴がある症例、腎に悪性腫瘍の進展がある症例はAKIのリスクになりうる。


・メソトレキセート:代謝阻害薬の薬である。白血病・肉腫・リンパ腫の治療に使用。高容量(1g/m2)は尿細管内の結晶を形成し閉塞を生じ、また直接的に尿細管障害を生じAKIを引き起こす。


・ペトレキセド:代謝阻害薬で、尿細管障害を生じATNを生じAKIを生じる。重度の場合ではFanconi症候群を生じる。


下記は骨粗鬆症の予防で使用されものであるが、
・パミドロネート:FSGSを生じやすい。
・ゾレドロネーと:ATNを生じやすい。
は覚えておく必要はある・


★分子標的薬
・VEGF阻害薬:大腸ガンや腎細胞癌などの治療薬として使用される。高血圧、タンパク尿、AKIとの関連性が示されている。また、TMAやFSGSの報告もありVEGF阻害薬のAKI機序としては最多である。

・BRAF阻害薬:容量依存性のAKIを生じる。尿細管間質障害を生じる。80%の症例が薬剤の中止で改善するが、はっきりとした機序までは不明確である。

・ALK阻害薬:クリゾチニブ(ザーコリ)はATNやAINを生じAKIを生じうる。

★免疫治療薬
パート5のカテゴリには入れてはいなかったが、インターフェロンやインターロイキン2はAKIにおいては重要なので、把握しておく必要がある。
両者ともAKIを生じ、
−インターフェロンは、高容量のタンパク尿を生じ、微小変化群やFSGSといった腎炎所見をもたらしたことがわかっている。機序としてはインターフェロンがpodocyteにくっつき正常細胞の増生を変化させたと考えられている。薬剤の中止によりAKIの多くはよくなるが、collapsing FSGSなどは効果が乏しいと言われている。

★免疫チェックポイント阻害薬
これはAKIに関しては急性間質性腎炎を生じることが報告されている。また、AKIの程度も中等度から重度になることも多い。ステロイド治療や薬剤の中止により徐々に改善する。

今回は2回にわたって抗がん剤と腎機能障害に関して振り返ってみた。
うまくまとめきれていなく、読みづらい部分も多いと思うが、少しでも臨床の参考になればと思う。