腫瘍崩壊症候群(Tumor lysis syndrome)について話す。
★腫瘍崩壊症候群に関して:
腫瘍細胞の自然崩壊、または化学療法による崩壊で細胞内含有物の放出が生じる疾患である。TLSに伴う電解質異常としては高リン血症、高カリウム血症や低カルシウム血症がある。
・腫瘍崩壊症候群のリスク:
悪性腫瘍に関しては、バーキットリンパ腫、リンパ芽球性白血病、リンパ芽球性リンパ腫、びまん性大細胞性リンパ腫や増殖性が高く治療に対する反応が高い固形がんは腫瘍崩壊のリスクが高い。そのほかに腫瘍の大きさが大きいもの、LDH上昇正常の2倍以上、WBC上昇(50000)、臓器浸潤症例、高尿酸血症(7.5mg/dL)、腎障害合併例ありなどはリスクが高い。
腫瘍崩壊症候群に関してはリスクを評価するという事が重要である。
リスクによって治療や予防もことなる。
CJASN 7: 1730–1739, 2012
・予防:補液が基本となる
-低リスク:アロプリノールかフェブリクの使用を検討
-中リスク:アロプリノールかフェブリクの使用
-高リスク:ラスブリカーゼの使用
・治療:集中治療室への入院でモニター管理
-尿量>100ml/hrになるように補液
-ラスブリカーゼを単回投与(0.1-0.2mg/kg)
-電解質補正
・ 高カリウム血症:通常と同様(カルチコール、GI療法、K吸着薬など)
・ 低カルシウム血症
症候性:グルコン酸カルシウム静注
無症候性:カルシウム補充は避ける(リン酸と錯体を作り沈殿)
・ 高リン血症:経口リン吸着薬(Ca含有は避ける)、高度:透析考慮
Tips
□ちなみに尿酸が上昇することが何が悪いのか?
・尿酸の糸球体濾過量の増加→尿細管に到達し、尿細管閉塞、腎虚血と同様の血管狭窄や炎症
性サイトカインを助長し結果的には糸球体濾過量を減量させる。
そのため、尿酸は下げるべきである。
□カルシウム補充に関してはなぜ避けた方がいいか?
腫瘍崩壊症候群で高リン血症がある症例では、カルシウムリンの沈澱ができやすくなる。
とくにアルカリ尿の場合にできやすい。
□アルカリ尿にすると尿酸の可溶性は上がるが尿はアルカリにした方がいいの?
ちなみにアルカリ尿にする手段としては、クエン酸製剤などがある。(製品としてはウラリット)
ちなみに、尿のアルカリ化は推奨されていない。理由としては、リン酸カルシウム結石のリスクが上
昇するためである。
今回、長くなってしまったが少しでも参考になればと思う。
次回は少し話を進められたらと考える。