2017年7月9日日曜日

あたらしいMRIの使い方

 デンマーク人の女流作家Isak Dinesen(本名はKaren Blixen)の引用句に"The cure for anything is salt water: sweat, tears or the sea.(どんなものも塩水がなおしてくれる:汗、涙、あるいは海)" というのがある。塩水を扱う者(写真は塩水のなかで働くトレーナー)としては、味わい深い文章だ。




 いままでも汗と涙に注目してきた(それぞれ、こちらこちら)が、今回もその筋のお話。今月のJASNに皮膚のナトリウム量が左室の筋肉量と相関する論文がでた(JASN 2017 28 1867、図)。しかも、血圧よりも相関したという。対象はドイツのCKD患者さんたち(eGFRは平均51ml/min/1.73m2、尿アルブミン・クレアチニン比は平均432mg/g)。



 左室の筋肉量が体表面積で補正されていないなどの問題もあるが、皮膚にナトリウムがたまっていると心臓に負担がかかるという結論は直観的だ。著者は、尿ナトリウム排泄量は日によって変動する(ここでも「火星だより」などでふれた)から、皮膚ナトリウムのほうが正確かもしれないといっている。

 皮膚ナトリウムに変動がないという保証もないわけだが、もしそんなによいメトリクスなのだとしたら測ってみたくなる。これはナトリウム23のボリューム・コイルをつかい、3テスラのMRIで、2D-FLASHシーケンスというソフトで13分くらいかけて測る。何のことかわからないが、筆者は「この測定方法は世界でも数施設しかできない」と言っている。

 でも、我が国は高性能MRIの数において世界トップレベルなのだから、その気になれば測れるのではないか。アナログな体重や血圧、浮腫よりも「あなたの皮膚ナトリウムは40mmol/lで多いです」というほうがファンシーだ。いっそ、CKD外来でMRIをやって、皮膚ナトリウム量と左室筋量と冠動脈を全部評価する「トリプル(写真)」な時代が来るかもしれない。そのコストが生命予後や心血管系イベント予防に見合う計算ができれば。