腎臓が悪くなる原因に色々とあるが、心臓が悪いというのは一つ大きな原因として見かける。
今回は、慢性腎不全(CKD: Chronic Kidney Disease)と心機能が低下している人について考えてみる。
ある症例を見てみよう。
もともと慢性腎臓病で腎臓内科外来に通院していた80歳男性。この男性は、高血圧と心筋梗塞の既往があり循環器内科にも通院している。心臓に関しては収縮機能の低下した心不全(HFrEF: Heart Failure with reduced Ejection Fraction)として管理されている。内服薬はアスピリン、βブロッカー、ループ利尿薬、スタチン、ARBを内服している。バイタルは、血圧:118/70mmHg、心拍数:62回/分、呼吸数:16回/分。身体所見上は軽度のpitting edemaを下肢にに認めるが、JVPの上昇などは認めていない。生活の中では、悪い時にはNYHA class Ⅱの症状を夜間に感じるが朝には改善するとのこと。
もともと外来では血清Cr:1.3-1.6mg/dL程度であったが、ここ2年間では2.1-2.3mg/dLと増悪を認めている。特に尿蛋白定量や尿所見での新たな異常の出現はない。。
心機能に関しては心エコー所見でEF 38%であった。
ここで疑問がわく。
◆これは、心腎症候群 (CRS: Cardio Renal Syndrome)なのだろうけど、HFrEFの患者でCKDを持っている人はどのくらいなのだろうか??
◆この人にとってベストな治療はなんだろうか??
CRSの機序に関しては、下記の図が非常にまとまっている。
AJKDより引用 |
このような場面は、よく遭遇する機会が多い。今回はこの部分を少し考えれたらと思う。
・まず、HFとCKDが共に起こる割合はどうか?
–これに関しては、年齢上昇とともに並存する割合は増加する。また、高血圧、糖尿病、心血管疾患、腎疾患などのリスクファクターに強く影響を受ける。
☆エビデンスとして・・
ADHERE(The Acute Decompensated Heart Failure National Registry)の報告から、12万人のうっ血性心不全で入院した患者の半数以上がCKDの並存があったとしている。
HFrEF、HFpEF( Heart Failure with preserved Ejection Fraction)の患者が混合しているが、25の研究のメタアナリシスで55%の患者が、CKDを有していることが示された。
→なので、まず最初の疑問のどのくらいかに関しては50-60%の割合で持っていることがわかる。
・では、このように高率で併存する場合に何か悪いことがあるのだろうか?
–これに関しては、腎機能の低下と死亡率の上昇は先行研究によって示されている。下図が非常にわかりやすいが、CKDのステージが進行すると共にこの場合は生存割合は減少することがわかる。
なので、我々は腎不全の進行を抑えることは心不全の併発の割合を抑えているんだなーと感じながら管理をする必要がある。
ただ、腎機能だけを見ているわけにはいかず、ARIC(The Atherosclerosis Risk in Communicate) studyから、尿中のAlbumin/Cr比が心不全発生に関与していることも示されているため、尿中のデータも見て行く必要がある。
では、次の疑問のどのように管理すれば適切なのかであるが、今日は長くなってしまったので次回にしようと思う。
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とても、commonではあるが非常に重要なテーマなのかなと思う。