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2020/05/13

CKDの高カリウム血症は絶対にダメ!!どうすれば??

今回は、慢性腎不全におけるカリウムのPros and Cons (賛否両論)について話してみたいなと思う。

まず、はじめにProsのほうから。
Prosとしては、慢性腎不全にとって絶対に高カリウム血症はダメ!!
では、新規に出るK吸着薬を用いてしっかりコントロールしよう。そのために、K吸着薬のことを再度勉強してみよう!以前の記事も参考にしていただきたい。

まずは、現在使用されているものについてまとめてみる。本邦ではまだ承認されていない薬剤もあるが、重要である。

表:高カリウム血症の吸着薬まとめ

では、各薬剤に関して少し深堀りをしてみる。

■ポリスチレンスルホン酸(SPS):
これは、米国FDAで1958年に承認されている(もう半世紀も前の薬で今も活躍している薬なのである。)この薬に関しては大規模なRCT検査は行われておらず、観察研究が主体になっている。2015年に発表された小規模人数のRCTだが、一定のK低下作用が示されている。
しかし、この薬で悩まされるのは好ましくない合併症である。これは、患者、医師からもこの薬の評判をさげる理由となっている。
まず、悩まされるのが単剤で投与時に生じる便秘である。これを解決するために、SPSを高浸透圧物質であるソルビトールに溶解して便秘の副作用が改善する方法がある。しかし、腸管壊死・穿孔の重大な合併症が報告されている。2013年に報告されたSystematic reviewでも、30の論文で58人のケースで腸管穿孔が生じている。ソルビトール溶解は41人で17人はソルビトール非溶解だったので、SPS自体が害があることがわかる(報告では大腸壊死の割合がSPS使用者で0.14%、非使用者は0.07%)。

2019年にSPSに対しての後ろ向き研究ではあるが、65歳以上の20020人のSPS内服者を対象に研究された。それとマッチするように非使用者20020人を選択し、30日間での消化管の合併症の有無を比較した。SPS使用群では37人/1000人中、SPS非使用群は18人/1000人であった(HR:1.94 (1.10-3.41))。この研究結果からは、SPS使用で入院や消化管合併症が増加することが多くなったことがわかる。

つまり、もし使う場面がなければ、なるべく合併症の観点からSPSに関しては使わないほうがいいことがわかる。

■Patiromer(パチロマー):
これは新世代の高カリウム血症の薬で、2015年10月にFDAで承認されている(AMETHYDT-DN trial:下記参照)。
非吸収性のポリマーで、結腸で完全にイオン化されてカリウム濃度が最も高値の場所で、カルシウムとカリウムを変換し高カリウム血症を改善する。
AMETHYDT-DN trial:Phase 2 RCT、eGFR 15-59ml/min/1.73m2の糖尿病性腎症患者でACE-IかARB、もしくは両者を持っていて、血清カリウム >5mmol/lの患者306人に対してPatiromerを8.4-33.6g/日で開始し4週と52週で見たものになる。
投与群ではK血中濃度は低下し、副作用としても低マグネシウム血症(7.2%)や便秘(6.3%)、低カリウム血症(5.6%:K<3.5)などが認めれた。

Patiromerに関する研究は、2015年のAMETHYST-DN、2015年のOPAL-HK、2019年のAMBERは抑えておく必要がある。下にまとめる。

Patiromerに関しては、2022年に終了予定のDIAMOND trialがある。
これは心不全患者でRAS阻害薬使用者の高カリウム血症のマネジメントでPatiromerを使用するとどうなるのかをみているRCTである。


■ZS-9(Sodium zirconium cyclosilicate:SZC):
Lokelmaという粉の形状で2018年5月にFDAに承認された。選択的に水素・NaとKを交換する結晶構造になっている。
投与の推奨としては10g×3/日で48時間、その後は10g/日に減量して投与を行う。この薬もSPSやPatiromerと同様に他の薬内服と前後2時間はずらす必要性がある。
ここでも、キーの論文をまとめてみる。
2015年のHARMONIZE、2015年のNEJMの論文、2019年のCJASNの論文である。

あとは、ここに考えなくてはいけないのがコストの問題である。
Patiromerは一ヶ月で1032ドル(=約11万円)、ZS-9(Sodium zirconium cyclosilicate:SZC)も1ヶ月で900ドル(=約10万円)、ポリスチレンスルホン酸はものにもよるが1ヶ月で1万円前後になっている。
なかなか、月10万は厳しい、、、

今後新規治療薬値段が抑えられつつ、我々のもとにくることを切に望む。


2018/11/07

Karnivalのあとで

 米国腎臓学会メイン会場のエキシビションにはさまざまな会社・団体が出展して(日本腎臓学会もそのひとつ)いるが、今年もっとも派手に宣伝していたのはPatiromerで、カリウムだけに"K"arnival(カーニバル、写真)と題したブースでお祭り気分を演出していた。




 この新規K吸着薬(商品名Veltassa®)はこのブログでも何度か紹介した。スイスの製薬会社がつくったが、2018年には日本の製薬会社が国内における独占的開発・販売契約を締結した。どこかで外挿試験をして、認可されればMRさんがパンフレットを持ってくるかもしれない(ペンやお弁当の提供については、来年以降さらに業界の自主規制が強まる見込みなので、わからない)。

 そのpatiromerについて、新しい論文(doi.org/10.2215/CJN.04500418)がCJASNにでた。こちらのvisual abstractにあるように、一番のメッセージはこの薬を4週間内服すると尿リン排泄(24時間、尿Cr補正)がさがるが、尿Ca排泄は変わらないということだ。

 PatiromerはCa/K交換なので、Kを吸着する代わりにCaが腸管にでて、リンを吸着すると言いたいようだ。CKD患者でリンが減るのはよいが、Ca含有リン吸着薬のように放出されたCaが血管石灰化などを起こしては困る。尿Ca排泄に有意差はなかったが、このスタディはカルシウムのネットバランスをみていないし、4週間と短期間なので長期の影響はなんともいえない。

 またabstractには載っていないが、以前から知られているように血中Mg濃度は有意に低下した(0.2mg/dl、P<0.001)。マグネシウムもまた、減ると血管石灰化や心血管系イベントなどさまざまな悪影響があるとされているから、これにも注意を要する。
 
 ただ正直、これらの心配にどれくらい実質的に意味があるかは分からない。

 実はCa/K交換樹脂(カリメート®、アーガメイト®)とNa交換樹脂(ケイキサレート®)の争いは、日本でずっとある。そして、例によって前者は石灰化の心配、後者はNa貯留・血圧上昇の心配などが言われている。また最近は、K+吸着選択性の高い後者がK+とサイズの似ている(こちらも参照)NH4+をよく吸着しアシドーシスを補正するという。しかし、宣伝文句以上ではない印象もある。
 
 お祭り騒ぎのPatiromerだが、宣伝文句以上の効果があればいいなと思う(写真は2011年ドラマ『パーティーは終った』の主題歌、『夢の世界』を歌ったMonkey Majik)。




2016/05/15

Novel K binders

 新規K吸着剤にもっとも関係ありそうなトピックが腸管におけるK handlingだ。経口摂取したKは90-95%が吸収され、便中にはわずかしか残らない。小腸では受動的な吸収、近位大腸ではnon-gastric H+/K+-ATPase(HKα2)により再吸収、遠位大腸ではBKチャネルにより排泄される(Pflugers Arch 2010 459 645)。

 なおBKチャネルはαサブユニットの4量体だが、調整機能をもつβ2サブユニットがチャネル開放に関与しているかもしれない。またBKチャネルは腸管表面のenterocyteよりcrypt cellに多く分布しているらしい。BKを開くのは細胞内のcAMPで、またCFTRによるCl-の排泄ともリンクしてelectroneutralな輸送になっている。さておき腸管は無尿の透析患者さんでは腎以外のK排泄場所として相対的により重要になる(以前透析患者さんにRAA系阻害薬を使って高K血症になるかと質問されて、腸管K排泄と関係あると調べたことがあった)。

 で、Patiromerはこの遠位大腸で排泄されてくるKを吸着する(とスタディのbackgroundに書いてあった)。Keyexalateもやはり大腸で主にKに吸着するとある。遠位大腸で吸着することでK gradientが維持されて排泄が持続するのだろうか。

 リン吸着剤は毎回の食事と一緒に内服して食事に含まれるリンが吸収されないようにすると理解しているが、K吸着剤はどうなのだろう。Patiromerは治験では朝食と夕食時の1日2回だったが、現在収載された用量は1日1回食事と一緒にとある。ZS-9の治験(NEJM 2015 372 222)では最初の48時間は毎回の食事と一緒、3日目以降は維持期で朝食と一緒に1日一回だった。

 新規K吸着剤での問題は、Patiromerでは低Mg血症で、K+だけでなくMg2+も吸着してしまうのか、下痢するからなのか。ZS-9では報告がないが、unhydrated K+の直径は2.98Å、ZS-9のポアもそれとほぼ同じに作られているのでK+選択性が高いせいか(Ca、Mgの25倍;Plos One 2014 9 e114686)。ただしZS-9はNa+とH+の交換にK+を吸着するので10g/d群で浮腫がみられた。

 またPatiromerは他の薬を吸着してしまわないように6時間以上空けることとある。治験のときにRAA系阻害薬が6時間以上空けて内服されたのかは確認できなかった(そのままの量で内服したとある)。RAA系阻害薬も吸着されてK+がさがったという推理も可能だが、まあそういうことはスタディデザインの時にきっと考えてあることだろう。




2016/05/13

Feed-Forward

 新規経口K吸着剤Patiromer(Ca-K交換樹脂、昨年NEJMに論文がでた)が昨年10月にFDA認可され、今年の5月26日にはZS-9の認可レビューについてFDAから回答がでる。ZS-9はK選択性の高い多孔質ジルコニウムシリカで、Na+とH+の交換にK+を吸着する。それに合わせてPatiromerを開発したRelypsa社がKidney Internationalの別冊を一巻買ってK特集号を組んだのが届いた。

 じつはKホメオスタシスについての論文は昨年NEJMに出て(2015 373 60)、JASNにもonline firstで出ていた(2016 27 981)。とくにJASNとKI supplementsは、現状ではRAA系阻害薬が高K血症のために十分に使われていないため、新規K吸着剤をつかってその効果を発揮させよう;またKayxalateは有効性と安全性に疑問がある、というキャンペーンになっている。ここまでやれば、renal/medical communityも高K血症の新しい治療薬をよりembraceするかもしれない。

 さてキャンペーンはさておき、勉強になる内容としては、従来のRAA系と遠位ネフロンで説明されてきたメカニズム(ROMKチャネルがrenal outer medullary Kの略で、BKチャネルがbig conductanceの略だとはじめて知った)とは別の、最近わかってきたメカニズムのいくつかについて紹介されていた。一番featureされているのは名前がついていて、feed-forwardという。

 これは、K-rich dietや経口K loadの数十分後に腎からのK排泄が増加する現象で、これ自体は30年前からいまUC DavisにいるDr. Rabinowitz(NEJMレビューの著者でもある)がヒツジで実験し、それが血液K濃度、aldosterone、流量、尿Na、尿pHなどとは無関係で、「体循環に入る前のどこかでKをセンサーし腎のK排泄を起こす仕組みがあると思われる」と予想されていた(Am J Physiol 1988 254 R357)。

 その後この現象はヒトでも確認され、GI-renal kaliuretic signaling axisについてさまざまな研究が行われているが全貌はわかっていない。体循環に入る前ということは消化管か門脈系か肝臓ということで、たとえば門脈にKを注射しても同じことが起こる(岐阜大学のAm J Physiol Regul Integr Comp Physiol 2000 278 R1134、Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol 2004 286 R591)。

 で、splanchnicにKを感知してどうやって腎K排泄が起こるのか。そんな消化管ホルモンはいまのところみつかっていない。periarterial hepatic nervous plexusの活動が落ちることがわかっていて、迷走神経によるシグナルが脳に届いて脳から腎に作用が行くのかもしれないと想定されている。腎にシグナルが届いてどうやってK排泄がおこるかについては、kallikrein-kinin系の関与や、NCCの不活性化(脱リン酸化)が知られている。

 これは面白い現象だが、「だからK吸着剤を使おう」ということには直接はつながらない気もする。あと気づいたのは、KI supplementsでこの現象を解説した論文(KI suppl 2016 6 7)の図2と図3が、別著者の別論文(Semin Nephrol 2013 33 248)に掲載された図1と図2と酷似していることだ。KI supplementsには「筆頭著者のcourtesyによる」とあるから、筆頭著者の研究論文に初出しているのかもしれない。Semin Nephrolのほうは出典は書いてない。

 [2016年6月追記]ZS-9はFDAにリジェクトされ、ZS-9の会社株が下落してPatiromerの会社株が急上昇した。ただしリジェクトの理由は安全性ではないようで、製薬会社は手紙を読んですぐに手を打つとしている。











2015/05/01

Patiromer

 日本に帰って来て気づいたことのひとつが、日本のほうが圧倒的に多くK吸着剤が処方されていることだった。私はK吸着剤は効果が余りない、また腸管の壁に貼り付いて壊死を起こす副作用があると習って、処方することはほとんどなかった。CKD患者さんでRAAS inhibitorを増やしたいが高K血症があるときにはK制限の栄養指導をしたり利尿剤を追加したりすることが多かったし、透析患者さんで高K血症になりやすい場合は透析液のK濃度を変えることもあった。

 今日、今年はじめのNEJMにK吸着剤の有効性を示すスタディが出たと知った(NEJM 2015 372 211)。新薬はRelypsa社のpatiromerといい、Ca2+をcounterionとする非吸収性のK+吸着剤で、腸管からのK+排泄が最も行われる(内腔K+濃度の最も高い)遠位結腸で主に働くという。また、osmotic diarrheaのもとになるsorbitolの含有量が既存のsodium polystylene sulphonateにくらべ少ないそうだ。

 で、このpatiromerを1日2回内服すると、eGFRが15-60ml/min/1.73m2(ステージ3-4CKD)でRAAS inhibitorを内服している99%白人の高K血症患者さん(約半数が利尿剤も内服している)のカリウムが用量依存的に下がる。すなわち、下がりすぎたら減量する;止めると上がる。11%で便秘の副作用が出たが内服継続を忍容できたという(ただし対象患者さんの約10%が最初の4週間でloss of follow-upになっているからその分はわからないが)。1人が腸間膜静脈塞栓症で死亡したが薬との因果関係はないという。RAAS inhibitorを増やしたいが高K血症のためにできないような症例でよい適応かもしれない。

 しかし個人的にこのスタディで最も驚いたことは、対象患者さん243人のうち151人が「中等度から重症の」高K血症(5.5-6.5mEq/l)でありながら、その値でも何も起こらないなら構わないというわけか普通にフォローされていたことだ。確かに腎臓内科医になると6.5mEq/l以下の高K血症がそう怖くはなくなるが、個人的にはここまでカリウムを「高め安定」で外来フォローしたことはない(このスタディはアメリカ、EU、東欧で行われた)。

 患者の約4割はRAAS inhibitorを「maximal dose」内服していたことから、これくらいカリウムが高くなっても、そのリスクよりもRAAS inhibitionによるCKD進行予防のメリットを優先するプラクティスがなされているということなのだろうか。因みに高K血症による心電図変化がみられた患者さんはスタディから除外されているが、それは別の治療を受けたということなのか、それとも多少の心電図変化があっても病状とK値が安定していれば平然とフォローされているのか。

 次に驚いたのは、COI開示だ。このスタディ自体が薬を作ったRelypsa社のお金で行われたことは当然としても、investigator達が同社の株式を保有していたり、同社のみならずありとあらゆる製薬会社からfeeを貰っていたことだ。Akebia Therapeutics、Janssen、AstraZeneca、Otsuka、Amgen、Merck Sharp、Dohme、AbbVie、Novartis、Sandoz、Boston Scientific、Medtronic、Daiichi-Sankyo、Bayer、Johnson and Johnson、Oxygen Biotherapeutics、Pfizer、Tricida、scPharmatheuticals…、でるわでるわ。スタディに関わるとお金になるんだなと実感した。


 

2019/04/22

Veverimer(ヴェヴェリマー)

 「薬のない製薬企業」というと、「薬ではなく幸せや健康、安心といった価値ををつくり提供する企業」、という意味の比喩表現かと思うかもしれない。しかし、ウォール・ストリート・ジャーナル(2018年10月31日付)にそう報じられたTricida社は、文字通り認可された薬が一個もないが、Venture RoundsとIPOで数100万ドルの資金を集めた。

 これは市場(とFDA)が治験中の「ある薬」に期待しているからである。筆者は腎臓内科医なので、読者のご賢察どおりそれは腎臓内科領域の薬で、名前をVeverimerという。先月に第3相がLancetに発表された(Lancet 2019 393 1417)ので、ご存知の方も多いだろう。第2相がCJASN(CJASN 2018 13 26)だったことを考えると、(市場をふくめた)インパクトの大きさがうかがえる。

 まず薬の説明をすると、VeverimerとはH+とCl-をどちらも吸着する、いわば「新世代」の樹脂である。吸着は二段階で、まずアミノ基にH+を吸着し、それにひきつけられる陰イオンのうち(小さくて腸管に豊富な)Cl-がより選択的に吸着されるように分子構造を工夫している。

 こんな薬はよほどの高分子化学のノウハウを持った人でないと作れないだろうが、実際Tricida社のCEOであるGerritt Klaernerは、Max Planck Institute for Polymer Researchを卒業している。そして何を隠そう、昨年の米国腎臓学会で祭りを起こした(こちらも参照)カリウム吸着樹脂PatiromerのRelypsa社の創立者でもある。Tricida社も、その流れで最初はTrilypsa社と呼ばれていた。

 そして治験についてPICOフォーマットで説明すると、P(患者)の治験対象はブルガリア、クロアチア、ジョージア、ハンガリー、セルビア、スロベニア、ウクライナと米国(米国は全体の約10%)の保存期CKD患者200人余りで、介入群の各データ(中央値など)は以下の通り。

年齢 62歳
白人 98%
男性 60%
糖尿病 61%
高血圧 97%
ACEI/ARB内服 67%
利尿薬(ループないしサイアザイド) 60% 
eGFR 29ml/min/1.73m2
HCO3- 17.3mmol/l
アルブミン尿 241mg/gCr(24.8mg/mmolCr) 

 なお、国をこのような選択にした理由は明記されていない。EU内で治験基準が統一されているとすれば、治験参加費の問題だろうか(資金は当然、Tricida社がだしている)。あるいは、このコホートでは重曹使用者が8-10%と少数だったので、重曹使用率の高い国を避けたのかもしれない。

 I(介入)はveverimerを6g/d、12週間。C(対照)はプラセボで、HCO3-濃度が18未満/以上の比率が同じになるようランダム化され、クロスオーバーはしていない。O(アウトカム)はHCO3-濃度が①4mmol/l以上上昇、または②22-29mmol/lを達成した患者割合だった。ほかに、アシドーシスによる骨や筋肉への害をみるため、身体機能なども比較している。

 なお測定はAbbott社のiSTAT®で採血後ただちに行われ、患者は採血前4時間は絶食にされた。絶食の理由は、アルカライン・タイド(alkaline tide)と呼ばれる食後の胃酸分泌の「反作用」で血中にHCO3-が放出される現象による影響を除外するためだ。

 結果、上記アウトカム達成者の割合は介入群で59%、プラセボ群で22%にくらべ有意に高かった。椅子から立ち上がるなどの身体機能検査でも有意差が見られた。なお副作用では消化器症状が多く、とくに下痢は介入群で9%、プラセボ群で3%だった。

 効果のある薬が増えたのは喜ばしいことだ。今後、重曹との差や、よりハードなエンドポイント(腎予後、生命予後)での効果が検証されたときに、「価格に見合った価値があるか?」という話になるのだろう。欧米で認可されれば、Patiromerのように日本でも治験されるかもしれない(ただし、パチロマーのように透析患者で用いられることはまず考えにくいが)。

 ポリマー技術が今後さらに応用されて、「腸管分子標的薬(または、利尿薬ならぬ利便薬)」の開発がさらに進むことが予想される。腎臓内科医も、腸管の生理学やチャネル(こちらも参照)に詳しくなる必要があるだろう(上述のアルカライン・タイドも、筆者は正直最近まで知らなかった)。





 なお創薬という意味で、化学の次はなんだろう?おそらく生物製剤なのだろう(遺伝子もまた、書き換えと合成の可能な「ポリマー」のひとつだ)。倫理的な障壁や、環境面への影響が懸念されるのでその時代はすぐには来ないと思われるが、いずれ「降圧菌」「吸着菌」といった治療ができるようになるかもしれない。
 

2020/01/15

カリウムなんか怖くない?

 スピロノラクトンはRALES(NEJM 1999 341 709)でHFrEF、PATHWAY-2(Lancet 2015 386 2059)で難治性高血圧、エプレレノンはEPHESUS(NEJM 2003 348 1309)で心不全合併の心筋梗塞、EMPHASIS-HF(NEJM 2011 364 11)でNYHA2度のHFrEFにおいて、それぞれ有効性が示されるなど、エビデンスの集まる、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(mineralocorticoid receptor antagonist, MRA)。

 さらに、特許のほぼ切れたACE阻害薬・ARBにつづく「第三のRAA系阻害薬」として、MRAの新薬開発が進む。昨年は非ステロイド系MRAのエサキセレノンが上市され、フィネレノンも海外で治験中だ(FIDELIO-DKDはNCT02540993、FIGARO-DKDはNCT02545049)。

 しかし、MRAもRAA系阻害薬である以上は、高カリウム血症と腎障害が問題になりえる(下表は、添付文書を元に筆者が作成)。




 このうち、高カリウム血症について、新規カリウム吸着薬Patiromer(こちらも参照)の会社(こちらも参照)が「うちの薬をつかったら解決するのでは?」と考えて組まれたのが、AMBERスタディ。その第二相が昨年でていた(Lancet 2019 394 1540)ので、遅ればせながら報告する。

 AMBERは欧州・英国・南アフリカ・米国など10カ国の他施設スタディだ。対象は、eGFRが25-45ml/min/1.73m2(平均35-36)で、カリウム濃度が4.3-5.1mEq/lの難治性高血圧患者が約300人(半数が女性、99%が白人)。うち約50%がβ遮断薬、約70%がカルシウム拮抗薬、ほぼ全例が利尿薬とACE阻害薬ないしARBを内服していた。重曹については、本文には記載がなかった。

 スタディはこうした患者をパティロマー群とプラセボ群にランダム化し、スピロノラクトンが血圧・カリウム値・腎機能によって0-25-50mg/dに調節された(eGFRが4週以上にわたり30%以上ひくければ中止する、など)。また、パティロマー(またはプラセボ)はカリウム値によって0-6包/dに調節され(1包は8.4g)、平均使用量は1包/dであった。

 プライマリ・エンドポイントは介入12週間後の「スピロノラクトン継続率」で、パティロマー群で有意に高く(86% v. 66%、p<0.0001)、50mg/d内服できていた割合も高かった(69% v. 51%、有意差の記載はなし)。予想されるように、プラセボ群では5.5mEq/l以上の高カリウム血症が多く(約60% v. 約30%、有意差の記載はなし)、スピロノラクトン中止理由の約2/3を占めていた。


 エンドポイントや有意差がやや商業的な感は否めないが、ともかくこれで、オオカミならぬ「カリウムなんか怖くない」、だろうか(下図は1933年のディズニー映画『三匹のこぶた』で、レンガの家を作る1匹を残りの2匹が笑う歌、"Who's Afraid of the Big Bad Wolf")?


(出典はこちら)


 そうであってほしいが、いくつか懸念される点をあげておく。たとえば、カリウム吸着薬による消化器症状や消化管穿孔(こちらも参照)は大丈夫か?AMBERでは(新規吸着薬なだけあってか)下痢に有意差がなく、消化管穿孔の報告もなかったようだが、より長期の使用では注意が必要だろう。

 次に、RAA系阻害薬を重ねることによる腎機能障害は吸着薬で解決しないのでは?AMBERでは、どういうわけか12週時点でのeGFR低下はプラセボ群のほうが多かった(2.1 v. 1.4ml/min/1.73m2、有意差の記載はなし)。「ACEI/ARBとMRAの併用」は「(NEPHRON-Dスタディなどで腎機能障害が問題になった)ACEIとARBの併用」などと違う、というのならよいが(これについては論文でも考察されていなかった)。

 最後に、吸着薬を使ってでもMRAを加えたほうがよいのか?という根本的な疑問。じつはAMBERでは、MRAの継続率の高いパティロマー群と、継続率の低いプラセボ群で、12週時点の血圧に有意差はなかった。冒頭の各種スタディからは、「同じ血圧でも、MRAを加えたほうが心予後や生命予後が良さそう」とも類推されるが・・。


 新規カリウム吸着薬は日本でも治験中だし、そのうち認可されることだろう。またMRAも、フィネレノンなど今後も新たに認可されるかもしれない。新薬がふえるのは結構だが、どのように治療に取り入れるか。こうしたスタディを他山の石として、今から慎重に考えておきたい。

 
 
(こちらより改変)

2016/11/18

慢性の高カリウム血症の治療

外来患者でも高カリウム血症の人によく会うと思う。
特に慢性腎不全の人などは高カリウム血症できて、「また、たくさんカリウム多いもの食べたでしょ〜?」って会話を外来で繰り広げるかもしれない。

まず、高カリウムの主なリスクはなんなのだろう?
・eGFR低下、男性、RAS阻害薬(特にdual RAS 阻害薬)、糖尿病
上記は主なリスク(am j nephrol 2015 41 456-463)になる。

特にdualでの高カリウム血症はNEJMのNEPHRON-Dというものであり、覚えておくといいかと思う。

僕らは急性の高カリウム血症の治療はグルコン酸カルシウムを投与して、GI療法をして、利尿薬を使用してなどとするが、慢性的な高カリウム血症の治療はどうするのがいいのか?

例えば、尿からのカリウム排泄増加として利尿薬やフロリネフなどのミネラルコルチコイド刺激薬などが言われている(kidney Int2009 Oct;76(8):877-84)。
しかし、体液量が低下している人にとっては使用しづらい。

そこで、やはり僕らが使っている陽イオン交換樹脂が一つは出てくる。
一つはカルシウム型でもう一つがナトリウム型である。
カルシウム型は商品名:カリメート、アーガメイトであり、ナトリウム型は商品名:ケイキサレートである。違いは交換がNaとCaで違い、ケイキサレートの方が下痢しやすいなどとも言われるがどうであろう?
イオン交換樹脂でいい点としては正常Kの人には利点はないということである。つまり低カリウムにはしない(J Am. Soc Nephrol 9: 1924-1930. 1998)

新たに薬が出ているのもおさえるべきである。
PatiromertとZirconium cyclosilicateである。
この二つに関しては、様々なRCTが出ているが、それぞれNEJMのは押さえておくと良い。

また、副作用に関してはPatiromerは便秘や低マグネシウム血症があり、Zirconium cyclosilicateは浮腫の副作用があるということは押さえておくといいと思う。

日本には2016年現在認可されていないものではあるが、慢性期の高カリウムの治療も変わると感じる。



2019/09/05

外科医からの忠告

 51歳男性。インフルエンザ・MRSAによる壊死性肺炎からショック・ARDS・AKIを合併し入院。昇圧薬、緊急透析などをふくむICU管理を受けた数日後、下血と腹部の筋性防御がみられた。緊急開腹をおこなったところ、回腸末端・上行結腸・盲腸・直腸に多数の穿孔がみられた。病理標本を示す。




 Q:診断は?

 
 じつはこの症例はCJASNの2019年6月号の表紙を飾ったので、ご存知の方も多いかもしれない。紫色で魚のウロコのような構造物は、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム・カルシウム複合体(polystyrene sulfonate complex, PSC)の結晶。緊急透析でも高カリウム血症が改善しないため、1日あたり100グラム以上のPSCが経口・経腸的に投与された。どうしてそんなに大量のPSCが投与されたのかは、わからない。
 
 雑誌には、このあとこの患者がどうなったかは書かれていない。しかし、奇しくも日本臨床外科学会雑誌の2019年5月号に『ポリスチレンスルホン酸カルシウム内服中に発症したS状結腸穿孔の2例』なる報告が載っていたので紹介する(日臨外会誌 2019 80 943)。

 1例目は、CKDで内科外来に通う87歳女性、入院時Cr 1.7mg/dl。S状結腸穿孔により硬便が腹腔内に流出していた。単孔式人工肛門造設術を行い、手術は2時間41分、出血量は150ml。術後は人工呼吸器管理・大量輸液・広域抗菌薬・トロンボモジュリン・エンドトキシン吸着をうけた。回復し、リハビリおこない術後79日に自宅退院。

 2例目は、CKD(入院時Cr 2mg/dl)だけでなく、潰瘍性大腸炎の寛解後でもあった。S状結腸に2箇所の穿孔あり。単孔式人工肛門造設術を行い、手術は2時間10分、出血量は650ml。術後5日目にARDSとなり、一時回復し抜管されるも、再発し34日目に死亡退院。

 この論文が医学中央雑誌で過去の報告を検索したところ、ポリスチレンスルホン酸製剤内服中の下部消化管穿孔は全例が左側結腸に発症していた。製剤により水分を吸いとられ硬くなった便塊が通過障害を起こすためと考察され、上皮機能変容薬(ClC-2チャネル阻害薬など、こちらも参照)の使用が提案されている。

 「新規カリウム吸着薬があれば大丈夫」と思うかもしれないが、イオン交換樹脂であればやはり便中の水分は抜ける。Patiromerでも便秘は11%に見られたし(NEJM 2015 372 211)、ZS-9の第3相試験(CJASN 2019 14 798)でも便秘は6%にみられた(同じ号の表紙にPSC結晶の写真を載せたのにも、警告の意図があるのだろうが)。同様の合併症に注意が必要だ。


 最後に、1例目は低カリウム血症(1.8mEq/l)にも関わらずポリエチレンスルホン酸製剤が投与されていた。著者らは「定期的に血液検査を行い、場合によっては製剤の減量や中止も検討するべきであった」と戒めている。外科雑誌にとどめておくにはもったいない、的確な忠告といえよう(下図は、医原性を意味するiatrogenicの由来でもある、ギリシャ語のiatros)。