2017/06/02

脂質異常症の治療〜PCSK9阻害薬にもふれて〜

脂質異常症についての簡単なUPDATEについて前回はふれた。

やはり慢性腎不全の患者でも脂質の管理に関しては本当に悩まされる。
少し、今回は治療についてふれたいと思う。

治療に関しては大筋は
・スタチン製剤
・非スタチン製剤
に分けられる。

非スタチン製剤はエゼチミブ(小腸コレステロールトランスポーター阻害)、PCSK9阻害薬に大きくは分けられる。

エゼチミブに関してはNEJM 2015に急性冠症候群の治療で、スタチンにエゼチミブを併用するとLDL-Cの改善と心血管アウトカムが低下するという報告が出ている(IMPROVE-IT trial)。この研究ではLDL-コレステロールを下げるのは悪いことではないという形で報告している。





もう一つの非スタチン製剤がPCSK9阻害薬である。
この薬剤に関してはPCSK9は肝臓で産生されるプロテアーゼ。
これに対するモノクローナル抗体で、PCSKを阻害する。
本来は図の上のようにPCSK9がLDL receptorにくっつき、細胞内でLDL-Cと一緒に分解されてしまう。
PCSK9阻害薬により下の図のようにLDL-receptorは破壊されず、LDLの血中からの吸収を行い続け低下させる仕組みである。
現在日本にはPCSK9阻害薬は2種類でエボロクマブ(レパーサ皮下注)とアリクロマブ(プルエント皮下注)である。
PCSK9阻害薬の試験といえば有名なのはFOURIER trial(NEJM 2017)である。
この研究は日本を含む機関で実施された研究で27564名を対象に行われている。
この結果はPCSK9阻害薬の使用でLDL-Cは92mg/dL→30mg/dL(48week)と優位なLDL-C低下作用を認め、一次エンドポイントとして設定した主要心血管イベント(心血管死,心筋梗塞[MI],脳卒中,不安定狭心症による入院,冠動脈血行再建術の複合エンドポイント)も低下させた。
腎不全の人には使用できるという点では安心ではある。

常に考えるのは値段である。
エボロクマブは140mgの注射は1本 23000円近い。通常は2週間に1回の使用か4週間に3回の使用であり、1ヶ月に5万円ほどかかる。。
患者にとっての負担は大きく、これに関してはJAMAの論文でもふれていて、もっと安ければ費用対効果はいいのにとしている。

現在、悪性腫瘍に関しても抗体製剤が出現しており、費用が問題となっている。
我々は、患者さんのことももちろん経済的なことやpolypharmacyにならないように常に考える必要がある。