2017年6月16日金曜日

滝を追いかける 4

 閉塞後多尿(POD)は、実験しやすいので昔からいろいろ調べられており、教科書にも割と深くその仕組みが書いてある。Brennerの37章がそれに当てられているが、著者の一人がMark L. Zeidel先生なことから話は少しdigress、つまり脱線する。

 Zeidel先生と出会ったのは2003年のピッツバーグ(当時の写真はこちら;この投稿を書いたのは私ではないが)。そのときは、Zeidel先生が腎臓内科医なことも知らなかったし、そのあとこの街で研修することになるなんて思わなかった。

 2010年、ピッツバーグで研修医になりCCUをまわっていたとき、循環器フェローがボストンでZeidel先生に教わったと聞き、ピッツバーグから移られたのを知った。そして今年、この調べものをして先生の著作に会った。7年周期なのだろうか。

 医師のジェダイ道は、私は大事だと以前から思ってきた。そして、たくさんの恩師から心に刻む教えを受けた(たとえばこれ)。こういう質問に答えるのも、知識や智恵を共有するのも、ジェダイ・ナイトフッドの実践と思ってつづけていきたい(写真はオビ=ワン・ケノービ)。





 さて、そのZeidel先生は何と書いているか?閉塞解除後は、糸球体の機能が落ちてGFRが下がるのに尿細管機能もおちて再吸収と濃縮ができなくなり尿は多くなる(JCI 1978 62 1228、JCI 1982 69 165)。また両側閉塞では体液貯留の影響もある。

 遠位尿細管、ループ上行脚などネフロンほぼ全域にわたってNKCC2、ENaC、NHE3、NaPi-2など多くの輸送体遺伝子の転写とたんぱく発現が低下する。NKCC2の再吸収がおちれば対向交換系がはたらかず、ネフロンの浸透圧勾配と、それによる濃縮力がおちる。

 この仕組みもある程度調べられている。ミトコンドリアの密度が低下しATPが作れなくなるので、Na/K-ATPaseによる能動輸送にまでエネルギーを回せなくなる。閉塞で尿がとどかなくなるので、再吸収しなくてよくなるせいもある。COX-2誘導でPGE2が著明にふえる、単球が誘導され炎症サイトカインをだす、AGII-AT1Rの系も関係しているようだ。

 尿濃縮は浸透圧勾配と、集合管のAVP-V2R-AQP2系(図はEur J Physiol 2012 464 133)による水再吸収が大事なはたらきだ。閉塞後にはV2R自体も減っているが、その下流の細胞内cAMP濃度上昇を起こしてもAQP2は増えないし内腔側にも動いてくれない。PGE2濃度上昇がAQP2抑制に効いているという結果がでているらしい。




 両側閉塞のばあい、体液貯留が問題になる。その結果、浸透圧利尿もおこるし、ほかに交感神経低下、アルドステロン低下、ANP増加などがおこる。とくにANPはマクラデンサでreninを抑制し、近位尿細管でAGIIを抑制し、集合管でアルドステロンを抑制するらしい。


 このように仕組みがいろいろ分かっているのは素晴らしいが、具体的にどう治療すればいいのだろうか?つづく(写真はピッツバーグ近郊の落水荘)。