2017/06/23

抗凝固薬と腎機能障害 2

前回抗凝固薬の基礎的なことについて話した。


今回はARN(anticoagulation related nephropathy)についてである。

ARNに関しては見逃している可能性がある抗凝固薬の合併症として非常に多い。

ワーファリンに関しては60年以上も使用され、最近になって腎機能に対する悪影響が報告されている。つまり、昔は抗凝固薬処方されている人に腎機能障害をみても認知度が低かったため、見逃されていた可能性が高い。

今回、この話題に触れさせて頂いたのは、これを読んでいる読者には少しでも認知をしていただいて、腎機能障害の原因に今飲んでいる抗凝固薬があるなと考えてほしかったからである。

つねに、僕らは患者を治療はしているが、その治療薬が患者に対して害を与えているのではないか?と考えることが重要である。

そもそもARNの定義は何なのか?
・AKIと診断され、他の原因がなくINR>3.0の時を定義としている。

抗凝固薬飲んでいる人全員が腎機能障害になるか?ということだが、やはりすべての人が腎機能障害になるわけではない。なりやすい人としては
・慢性腎機能障害を持っている人←最もリスクが高い!!
・高齢、糖尿病、高血圧もリスクファクター
・INR>4以上は生じやすい

どれくらいの人に起こるのか?
・さまざまな報告があるが、ワーファリン内服患者の20.5%に生じると言われている。

ワーファリン以外のDOACなども同じように生じるか?
・これに関しては報告が少ない。直接トロンビン阻害薬のダビガトランがARNを起こしたという報告は少数の報告や動物実験で認めている。
・Xa阻害薬に関しては報告としてはないが、起こしうると考えられている(ここは今後の報告に期待)

どのような臨床経過で生じるか?
・観察研究でワーファリン開始後8週間以内に生じている(Kidney Int. 2011;80(2):181.)。

まずは、ARNの概念をしっかりとつかんでもらえたらと思う。

この続きはまた次回とする。