2015/05/12

Mgおたく(aka MgSO4 for severe asthma and premature labor)

 私が札幌で働いていたときに出会い、私の渡米を可能にしてくれ、以後も母親のように親身に面倒をみてくれている恩師が、札幌を去る送別会の席でみんなに「最も好きなイオンは何ですか?」と聞かれて答えたのがマグネシウムだった。そもそも私が腎臓内科を目指したのに彼女は影響しているわけだが、それだけでなく師のあとを追うように私もマグネシウムに何となく注目してきた(リンク1リンク2リンク3リンク4リンク5)。

 しかし、灯台下暗しで「なぜ重症の喘息にMgSO4静注が有効なのか(有効性についてはJAMA 1987 257 1076など)?」という問いに今まで答えようとしてこなかった。調べてみると、Mg2+はCa2+と競合するので、Mg2+を投与するとCa2+による平滑筋の収縮が抑えられ、その結果平滑筋の弛緩が起こると考えられているようだ(Indian J Anaesth 2007 51 225)。そして、premature laborを遅らせるためにMgSO4が投与されるのも同様の理由なようだ(NEJM 1984 310 1221)。

 さらに、Mg2+が肺でどのような機能を果たしているかについてまとめたであろう論文"Magnesium and the lungs"(Magnesium 1988 7 173)によれば、Mg2+は平滑筋収縮だけでなく肺血管収縮、マスト細胞顆粒放出、その他neurohumoral mediator releaseなど多彩に関わっているそうだ。このMagnesiumという雑誌、マニアックで興味深いがどうやら廃刊になったようだ。しかし、international society of the development of reseach on magnesiumが出すMagnesium Researchという雑誌はあり、学会も開かれている。