以前、低体温症を透析で復温したことがありそれについて調べて書いたが、逆に透析液の温度を下げて血管を収縮させることで透析中の低血圧に対応することもある。透析中の低血圧は虚血・虚血後再潅流による心筋傷害やstunned myocardiumを起こすので、透析液の温度を下げて血圧を保つことは透析による心筋傷害を抑制するかもしれず、その結果心血管系の死亡を予防するかもしれない。
しかし実際臨床では、透析患者さんはアナ雪のエルザではないので透析液の温度を余り下げると寒くなり耐えられないことも多い。そこで透析液を患者さんの体温より0.5℃低くしてみてはどうか、と調べたイギリスとカナダ(カナダのオンタリオ州にもLondonという人口35万人の都市があると初めて知った…)のスタディの結果がCJASNに発表された(doi:10.2215/CJN.00200115)。
54人をrandominzeして12ヶ月間介入をおこない、アウトカムとしてcardiac MRIを行いEF、左室心筋mass、左室のstrain、大動脈の拡張など各種のパラメターを測定したところ、EFには差がなかったが左室心筋massなどには有意差がみられた。LV massは心血管死のsurrogate markerと考えられているので、仮説は検証されたと言ってもいいのかもしれない。ただ被験者数が少ない(除外が多いのでinternal applicabilityは高いがexternal applicabilityは低い)のと、これがこの領域で最初のRCTなので、より大きなスタディでの再検が必要になるだろう。