2015/05/25

Psychonephrology 2

 ESRDと認知機能については以前に講演を聴いてここに書いたが、認知機能の障害が進行している患者さんについては、家族と透析のwithdrawalについて議論すべきである、高齢でfailure to thriveに陥った透析患者さんで透析を止めることは珍しいことではない、とHandbook of Dialysisにある(この私の手元に届いた第5版はinternational editionと銘打っているから、そう考えるのが妥当というのが国際的に認知されているということなのだろう)。

 というか、そもそも患者さんに意志決定能力があるうちにRRTに関してよく話し合い、shared decision-makingとしてのadvanced directiveを取るべきだ。これについてはRenal Physicians Associationsが出しているガイドライン(recommendation;第二版、2010年)が役に立つ。この冊子は九つのrecommendationを出しており、それぞれ;


  1. AKI、CKD4、CKD5、ESRD患者においてshared decision-makingが取れるような医師患者関係を築く
  2. AKI、CKD4、CKD5、ESRD患者において診断、予後、治療選択肢を十分に説明する
  3. AKI、CKD4、CKD5、ESRD患者において予後の見立てを伝える(surprise questionなどが役立つ;surprise questionとは「この患者さんが12ヵ月後にも存命していたら私は驚くか?」というもの)
  4. Advanced care planningを作る;全ての透析患者においてadvanced directivesないしphysician orders for life-sustaining treatment (POLST)を取る
  5. 本人の現在の意思が確実な場合、現在は意思決定能力がないが過去に明確な意思を示している場合、指名された代理人がしないといっている場合、重度の不可逆な意識障害がある場合は透析治療をforegoする
  6. 透析治療を安全に行えない(認知障害でチューブを抜く)、腎以外の疾患で予後が規定されている、75歳のCKD5患者でsurprise questionがyes・comorbidityスコアが高い・functional statusが低い(Karnofsky Score 40未満)・Alb 2.5g/dl未満の二つ以上が当てはまる場合はforegoを健闘する
  7. 話し合って結論が出ない場合や予後予測がつかない場合などは、time-limited trialを考慮する
  8. 話し合いで考えの相違がある場合、システミックな段階を経てその解消を図る
  9. 病気になったことによる重荷に悩むすべてのAKI、CKD、ESRD患者に対して緩和ケアを提供する


 だ。実際には私は「透析は絶対に嫌だ」といっていたCKD患者さんがいざ透析が必要になったときにforgoしたのを見たことがない(腎以外の疾患が予後を規定する患者さんがforgoするのは経験したことがあるが、透析室に来なくなったので最期を見届けることは出来なかった)。しかし、十分に話し合いを尽くして透析導入をしているかと言われると、正直分からない。しかも、いまは日本という透析患者さんが世界一長生きする国(かつ個人のなかでもとくに高齢者の意志決定に家族が大きく関わる国)にいるので、事情が違うのかもしれない。