2015/05/10

RDW

 ソウルの江南近く、地下鉄二号線の서초(瑞草)駅または三・七・九号線の고속버스터미널(高速バスターミナル)駅から歩けるところに가톨릭대학교(カトリック大学校)の성의교정(聖医キャンパス;교정は漢字で教庭?)がある。行ったことはないが、ここの腎臓内科医を筆頭著者とする論文がPLOS Oneにでて、透析患者において赤血球の大小不同の程度を示すRDWの拡大が死亡率と心血管系イベントに相関していると発表した(DOI:10.1371/journal.pone.0126272)。



 RDWといえば血算で必ず測られて、「レベルの高い先生が見ると色々分かるなんか良いらしいもの」というイメージだったが、RDWが高い(すなわち赤血球の大きさがバラバラ)人ほど心筋梗塞、脳梗塞などにかかりやすく死亡率も高いということはすでにスタディで示されており、今回の論文はそれを透析患者さん達(血液・腹膜どちらも)にも当てはまらないかと調べたものだ。ただ研究グループは、透析患者さん達は透析のたび失血したり鉄を静注されたりESAを打たれたりしてRDWがfluctuateするだろうと考えて、一点のデータではなくトレンドで見ることにして工夫した。

 結果、RDWが下がる群(上図破線)とRDWが上がる群(上図実線)では死亡率と心血管系イベントにくっきりした差がみられた。赤血球の大きさが揃ってくる人とバラバラになっていくような人では後者のほうがunhealthyな感じがするから結果には驚かないが、問題はそのメカニズムと臨床的意義だ。この論文の分析ではRDWが高くなるほどCRPが高くなりHgbと鉄が低くなる関係が見られた(フェリチンは変わらなかった)ことから、筆者達は慢性炎症と鉄利用障害の関与を推測している。

 臨床的意義に関しては、RDWのトレンドを追いかけるというのは結構手間なのと、上がり幅・下がり幅のregression coefficientが小さい(大前提に筆者達も透析患者さん達はRDWがfluctuateすると認めている)ので、「この患者さんではRDWが1年の間にアップダウンしながら少しずつ上がっているな」といって心血管系イベントにエクストラに注意するというような診療にはつながりにくいような気がしている。しかしCBCで毎回測っているわけだから、これからはもう少し注目してみようと思った。


[2018年11月追加]あれから、昨年台湾から腹膜透析(Sci Rep 2017 7 45632)、今年に日本の血液透析(やはりPlosOne、doi.org/10.1371/journal.pone.0198825)でRDWのデータが出た。これから日本でも、RDWが流行るかもしれない(下図の『TT』は、韓国・台湾・日本のメンバーからなるTWICEによる2016年リリースの曲名)。