2015/05/08

DECS study(aka cautiously optimistic)

 心臓手術とAKIは切っても切れない関係にあって、私も腎臓内科フェローだったころは毎日外科ICUに通って心臓手術後の患者さんを診ていた(し、それについても色々書いてきた;リンクはこちらこちらこちら)。そして今日、DECSスタディに出会った(doi:10.1681/ASN.2014080840)。これはCPB(cardiopulmonary bypass;人工心肺)使用の心臓手術例を対象にしているが、心臓手術後のAKIは炎症が機序に関わっているという仮説でdexamethasoneの術中大量療法(1mg/kg)を行ったものだ。いままでも小さなスタディはあり、これらを合わせたメタアナリシス(Artif Organs 2014 38 101)ではステロイドの効果は否定されたが、それでもあきらめずに今回欧米の多施設が大量療法を4465人のCKD患者(eGFRが60ml/min未満)を対象に行った。結果、RRT(renal replacement therapy;透析)を必要とした患者さんと入院中に亡くなった患者さんはステロイド群でプラセボ群に比して有意に低かった。とくに差が出たのはeGFRが15ml/min未満の群であったという。RRTの適応は固まったものがない(ということは各施設の腎臓内科医、心臓外科医、外科ICU医の合議で決まったということ)ので曖昧な点は残るが、心臓手術におけるAKIはすさまじいmortality risk factorなので、それを減らせる介入手段がひとつ増えるかもしれないと思うと楽しみだ。ちなみにこういう態度を英語でcautiously optimisticという。