2015/05/19

質問というプレゼント

 日本には「出る杭は打たれる」という諺があるが、英語には"squeaky wheel gets the oil(キーキー音を立てる車輪がオイルをもらえる;しっかり自己主張した者が欲しいものを得られる)"という諺がある。でも日本にも「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」という諺がある。だから分からないことはためらわずに聞いたほうがいい。

 と、お説教しようと思ったら別のチームの研修医の先生から「あの…お時間のあるときに質問があるのですが…」とエレベーターのなかで声を掛けられた。研修医の相談は指導医の勲章だから、私を選んでくれて有難いなあと質問を聞いてみると、何十個もずっと溜め込んできた事が分かった。勇気を出して長い間秘めた思いを伝えられて偉かったね、プレゼントをありがとう。

 それで、一個目の質問は「レジオネラ肺炎の低Na血症はどれくらい低いんですか?」だった。(知らん)と思ったが、知らないことを調べる方法を知っているのが指導医というわけで、まずUpToDateをみると「130mEq/l以下になることが他の肺炎に比べて多い」と書いてあった。

 すると次の質問は「レジオネラ肺炎で低Na血症になるメカニズムは何ですか?」だった。また(知らん)と思ったが(面白い!)とも思った。こういういい質問から考えるきっかけをもらえるから、私は質問を受けるのが好きだ。で、今度はUpToDateに載ってないので例のGoogle Scholarを調べると、SIADHと考えられてきた(Medicine 1980 59 188)が、嘔吐や下痢などでhypovolemiaを合併(尿Na濃度が一桁)して"appropriate"なADH分泌で低Na血症になった症例報告(BMJ 1982 284 558)もでてきた。