腎移植を行う原因疾患として糖尿病性腎症によるものは非常に多い。
移植前に糖尿病の管理は行われてある程度は安定しているが、移植後も糖尿病の管理をしていかなくてはならない。
では、腎炎で腎不全になった症例に移植をした場合に血糖に関してのケアは全くしなくていいかということに関しては、答えはNoである。
今回、そのことに触れたいと思う。
移植患者に新規に糖尿病が起こることがあることを知っていなくてはならない。
NODAT: New oncet diabetes after transplant
という。これは2011年にReviewがある
移植後半年を過ぎてから非糖尿病のレシピエントの約1/3が持続的な血糖異常が生じると言われている。急性と慢性のNODATに分類されており、
・急性NODAT:移植後3−6ヶ月以内に発症、免疫抑制剤(カルシニューリン阻害薬)に伴うものが多い。インスリン分泌低下のため、インスリン投与が必要になる場合も。
・慢性NODAT;移植後半年〜数年後に発症。過食や肥満によるものが多い。インスリン分泌は比較的保たれているので、経口剤などの内服で管理可能。
血糖異常は移植腎機能や生命予後にも影響を与えるため、しっかりとした認識管理が重要となる(AJT 2003、KI 2002)。
診断に関しては、OGTT負荷試験などで2時間血糖が200mg/dL以上や空腹時血糖で126mg/dL以上で糖尿病かを確認する。OGTTの施行時期であるが、本邦のガイドラインでも移植後一年以内は3−6ヶ月で施行し、移植後1年以降は年1回としている(空腹時血糖測定は適宜施行する。)
NODATのリスクをあげる因子
・免疫抑制剤:ステロイド、CNI、シロリムス(BMJで死亡率上昇の報告あり)など
・それ以外の要因:40歳以上の男性、HLAミスマッチ、急性拒絶の既往、献腎移植、多発性嚢胞腎、糖尿病家族歴など
なので、移植患者の管理で血糖のコントロールに注意を配ることは大事である。
また、血糖異常が見られた時に
ステロイドをなるべく早期に調整を行うことは重要である。ただ、拒絶もあるため完全にOFFにするのは推奨はされない。
また、タクロリムスをシクロスポリンに変更することに関しても推奨はされない。どうしても副作用が強ければ検討という形にはなる。
治療に関しては治療を徐々に上げていくことが推奨される。つまり、まずは非薬物的な治療を行い、ダメであれば経口血糖降下薬に移行し、難しければインスリン治療となる。
移植後の血糖管理は重要であり、移植後管理は内科医の腕の見せ所であると考える。
ドナー・レシピの想いの詰まった移植を長持ちさせるために我々も努力をしていくべきである。