2017/01/05

多発性骨髄腫を透析で治療できないか?本題 (Dialysis for multiple myeloma)

前回、多発性骨髄腫に対する透析で基礎の部分をお話した。
ちなみに、2016/12月号のCJASNのMoving point in nephrologyはparaprotein特集でありワクワクしてしまうので見ていただきたい。

前回もお話ししたように多発性骨髄腫の腎機能障害の原因となりうる軽鎖は(22.5-45kD)である。

まず、初めに治療的血漿交換は軽鎖を取り除けるのではないか?と考えられた。
最近の大きなRCT(104人のcast nephropathyの症例)で6ヶ月の時点での死亡や透析や腎機能改善に利点をもたらさなかった。
しかし、最近のもので大抵はボルテゾミブを投与する前に行う血漿交換をボルテゾミブと血漿交換を併用して行なったら14人中12人の腎機能が改善したと報告がある(NEJM 2011)。

ただ、現時点でのエビデンスとしては血漿交換は有用ではないというところである。

High-CutOff hemodialysis(HCO血液透析)は大きな膜孔(10nm)のヘモフィルターを用いて数週間の間、軽鎖を除くために使用される。High-Flux膜よりも2倍以上の大きさであり、大きさとしては約60000Dまで除くとされている。
なので、軽鎖はのぞかれると考えられている。試験管内の実験でも3週間のHCO-HDで90%の軽鎖が除去されたと報告されている(JASN2007)。
しかし、様々な研究で化学療法を上回るようなHCO-HDの結果は不明確であった。
また、化学療法が一定頻度で腎機能を改善させるため腎機能の改善に純粋にHCO-HDが有用であるというのは難しかった。

そこで、出たのがヨーロッパからのトライアルでEuLite trial(European Trial of Free Light chain removal by Extended Dialysis)とMYRE trial(Multiple myeloma and renal failure due to cast nephropathy)である。
MYRE trialはongoingで、透析が必要な多発性骨髄腫の急性腎不全の患者にボルテゾミブを基本とした化学療法を行い、透析を通常透析にするかHCO-HDにするかで比較したものである。これの結果は待ちたい。
EuLite trialは結果はまだpublishされてはいないが、英国でのmeetingで報告された。
90人のランダム化されたHCO-HDかHigh flux透析の比較で、HCO-HDは腎機能の改善に寄与しておらず、感染の合併症が増えたと報告している。

果たして、ここの部分はどうなるのか?今後の動向が楽しみです。
日本ではHCO-HDはやっているところもあるかもであるができないところが多いので、この結果が有用だと出ればこのような透析も選択肢になるのかもしれない。。