今回は妊娠している人の腎機能障害に関して触れて見たいと思う。
妊娠している人の腎機能障害は総合病院で勤めていると絶対にコンサルトされる内容であるし、しっかりと知識の整理ができていることが重要である。
・妊娠時のGFRやタンパク尿などに関して
妊娠中は一般的にはGFRが増加し、血清Crの減少を呈する。平均して0.4-0.8mg/dlの低下を認めると言われる(Adv chronic kid 2007)。
そのため、Crが1mg/dlは非妊娠者では正常値であるが、妊娠者では腎機能障害があると考えるのが重要である!
GFRの推算でMDRD式やCockroft-Gaultの式などがあるが、これは妊娠者の腎機能を評価するのは不適切の可能性が高い。MDRD式では、GFRの過小評価になり、Cockroft-GaultではGFRを過大評価すると言われている(Am J Perit 2007)。そのため、妊娠中のGFRのGold standardとしては24時間蓄尿のクレアチニンクリアランスになる。
タンパク尿に関しては尿のタンパク/クレアチニンが評価に用いられる。蓄尿のタンパクの方が正確であるが、ある研究(AJKD 2003)では正確性に差はなく、簡便であるため、これが用いられる。
妊娠患者でのタンパク尿の測定の意義は2つあり、1つは妊娠中のタンパク尿の推移の把握をし、腎炎などが妊娠時にないかの把握である。2つめは子癇前症(preeclampsia)の診断のためである。preeclampsiaは定義は妊娠20週以降に、新規の高血圧(140/90を超える)、タンパク尿(24時間で300mg以上)を認めるものである。
preeclampsiaの診断に尿のタンパク/クレアチニンを用いることは24時間蓄尿に比べてどうなのかという議論はある。
これに関しては、あるメタアナリシスで24時間蓄尿に比べタンパク/クレアチニンを用いた場合のpreeclampsiaの診断感度は90%で特異度は78%となっている(Clin chem 2005)。
タンパク尿が250-400mg/dayの時は診断しづらいという報告もある。
今回は、妊娠における腎機能の話とタンパク尿の話をパート1として話した。
次回以降に腎機能障害についてお話ししていこうと思う。