日本透析学会から2015年に慢性腎不全における腎性貧血治療のガイドラインが出ている。
これは細かいところやエビデンスなども書かれており参考になるので、一度読んでいただけたらなと思う。
その中で、今回重要な3つのtrialについて触れたいと思う。
1. CHOIR 試験:
目的:慢性腎不全(CKD)患者1432例において、遺伝子組み換えヒトエリスロポエチン(エポエチンα)によるヘモグロビン改善により心血管疾患および心血管死のリスクを低下できるかを検討した研究である。
一次エンドポイント:死亡+心筋梗塞(MI)+うっ血性心不全(CHF)による入院(腎代償療法を除く)+脳卒中としている。
割付:この研究はヘモグロビン高値群(715例):目標Hb値を13.5g/dLとしてエポエチンαを投与,低値群(717例):目標Hb値を11.3g/dLとしてエポエチンαを投与した。
結論:目標ヘモグロビン値を13.5g/dLとした場合、11.3g/dLの場合と比べ心血管リスクが上昇し,QOLのさらなる改善は認められなかった。
追加解析結果:到達したHb 値とエポエチンα 投与量を指標とし、高Hb 値群に割り付けられた患者の中でも到達したHb 値が高い患者のほうがむしろ予後がよく、エポエチンα高用量の使用が予後悪化との関連性を説明する因子となり、目標のHb 値が高いことと予後悪化の関連性は確認されなかった。
なので、高用量のEPOの使用をなるべく控えるために、鉄剤や今後出るかもしれないHIF阻害薬は有効なのかなと感じた。
目的:CKD stage3~4の患者(603人)で、貧血の完全正常化により心血管転帰が改善するかを検討。
一次エンドポイント:突然死+心筋梗塞(MI)+急性心不全+脳卒中+一過性脳虚血発作+24時間以上の入院を要する、あるいは入院が長引く狭心症+末梢動脈疾患+24時間以上の入院を要する不整脈とした。
割付:貧血完全正常化群(301例):目標Hb値13.0~15.0g/dLとしてエポエチンβを2000IU/週で皮下注、貧血亜正常化群(302例):目標Hb値10.5~11.5g/dLのレベルまでエポエチンβを皮下注。
結論:CKD患者において、早期に貧血を完全正常化しても心血管イベントのリスクは低下認められなかった。
目的:慢性腎疾患(4038例の2型糖尿病患者)で貧血を有する2型糖尿病において、エリスロポエチン製剤darbepoetin alfa(ネスプ)の臨床アウトカムへの効果を検討。
一次エンドポイント:全死亡+心血管イベント(非致死性心筋梗塞,うっ血性心不全,脳卒中,心筋虚血による入院)、全死亡+末期腎疾患とした。
割付:darbepoetin alfa群(2012例)では、ヘモグロビン値13g/dL維持を目標。プラセボ群(2026例)では、ヘモグロビン値<9.0g/dLの場合にdarbepoetin alfaを投与。
結論:CKDで貧血を有する2型糖尿病患者において、darbepoetin alfaによる臨床アウトカム改善は認められず、脳卒中リスクが増大。
現在のマネジメントとしては、Hbの目標値は10-12g/dLとして管理推奨されている。
その際に、EPOの使いすぎは良くないので、鉄剤の適切な使用や今後出てくる貧血の改善薬の使用はEPOの量を抑えると言う点で重要である。
また、CKD患者では出血リスクも高いため、出血の有無を確認することは重要である。