2017/01/15

妊娠している人の腎機能障害(AKI in pregnancy) パート2

パート2としては慢性腎不全おける妊娠はどうなのかを考える。

ある研究では軽度の腎機能障害(SCr<1.3mg/dl or GFR 60-89mL/min/1.73m2)がある症例では、血圧が正常であったり、タンパク尿のない症例では腎機能障害や児への合併症はほとんどない。しかし、高血圧の合併例やタンパク尿がある症例では、preeclampsiaの発症は妊娠患者の1/3に生じるとされる。また、低出生体重児や胎児死亡がわずかながら正常妊婦に比べ上昇すると言われる(J Woman Health 2003)。

中等度腎機能障害(SCr1.3-1.9mg/dl or GFR 30-59mL/min/1.73m2)での妊娠は軽度腎機能障害の妊婦に比べて明らかに合併症の割合は高くなる(NEJM 1996)。早期出産の割合は通常の10%程度から50-55%と高くなる。また、胎児死亡も6%と高くなり、34-37%の児が小さくなる。高血圧やタンパク尿の合併割合も高くなる。約25-38%の妊婦が血清Crが上昇する。出産6ヶ月後も腎機能低下が持続する例も1/3に認められ、10%が末期腎不全に至る。
GFR 40-59mL/min/1.73m2の妊婦は腎疾患の進展の危険性なく妊娠ができうるが、GFR 40mL/min/1.73m2未満の妊婦で1g/day以上のタンパク尿が出ている妊婦では合併症の割合が非常に高くなる(AJKD 2007)。

重度腎機能障害(SCr>1.9mg/dl or GFR 15-29mL/min/1.73m2)の妊婦ではさらに合併症の割合が高くなっている。早期出産の割合(73%)や低出生体重時の割合(57%)が高くなる。
ある報告では64%のpreeclampsiaの発生の報告や腎不全への移行が非常に高いことが報告されている(NEJM 1996)。

末期腎不全における妊娠:透析患者の女性の妊娠することは一般的に困難であると言われている。ただ、以前は妊娠の割合が0.9%程度と言われていたが、最近の技術の進歩で1-7%になってきたと言われている。受精したとしても妊娠前期で流産する割合が高いと言われている(Semin dial 2003)。妊娠出産の割合も1994年以前は27%であったが、最近の報告では65%程度にまで高くなってきている。ただ、依然胎児死亡は高い(14.1%)という問題も残っている。出生した児の平均も32週で2000g程度という報告もある(AJKD 1994)。

腎不全患者の妊娠を考えるときに常に児のことはどうか?患者本人の今後の腎臓の予後はどうなのか?ということを常に話し合わなければならないし、その部分が一番難しい部分であると感じる。
そのために、児を出産するために腎移植を踏み切る症例もあるが、移植後は1年間は妊娠は控えてもらうことが多く、患者の年齢との相談になるのであろう。

次回はパート3で合併症についてお話しする。