2017/01/23

Anticoagulant drug for AVF or AVG(シャントやグラフトの抗凝固薬使用)

前回はシャントやグラフトにおける血栓塞栓などについて話をした。
今回は、血栓などがおきた人でPTAや外科的治療を行い、起こさないために何かできる治療はないか?について記載する。

まず、血栓の90%以上が狭窄病変を有しており、NKF-K/DOQIのガイドラインでは、50%以上の狭窄病変や臨床的、身体所見的に異常のある場合(静脈圧の上昇や血流量の低下など)があれば、PTAの治療適応になる。ただ、狭窄の治療を上記の基準に満たないときに先行的に行うことについては意見が分かれており否定的な意見もある。
では、薬物的な予防治療はどうかというのが今回の話題である。

抗血小板薬(ジピリダモールやアスピリンやプラビックスなど)
−色々な研究が行われている。
■最も大規模なものは649人のAVGの人にジピリダモール(200mg ×2/day)+アスピリン(25mg ×2/day)とプラセボ群に分けてみたものである(NEJM 2009)。
結果は併用療法は開存率は明らかによかったが、有害事象(出血など)やAVG不全や死亡率は両者に差は認められなかった。2剤併用は出血リスクが多くなるとも考えられていたが、おそらくは抽出患者が出血リスクがすごく高い症例ではなかった。
■また、アスピリンの単独の使用を見たものでは、1年間のアスピリン使用は非使用者に比べてAVGの開存率がよく(30% vs 23%)、出血リスク、死亡率、入院期間、血管のイベントに差はなかったと報告している。これらの症例も出血リスクの高い症例は除いている(JASN 2011)。
■200人の患者に対してアスピリン+プラビックス群とプラセボ群で比較した報告もある。この報告は出血リスクがプラセボ群より高く中止となっている。肝心の血栓抑制に関しても明らかな有意差を持って改善させていることも認めなかった(JASN 2003)。

現時点では
・出血リスクが低く、血栓の詰まるリスクが高いAVGの症例ではジピリダモールとアスピリンの併用は一つの選択肢となる。

抗凝固薬(ワーファリン)
一般的にはワーファリンの使用は血栓の予防やAVG不全の予防に結びつかず、出血のリスクだけあげると考えられている。
上記を示した研究で、ワーファリンを飲ませPT-INRを1.5-1.9に設定した群とプラセボを比較すると、血栓の発生に差はなく、ワーファリン内服群では出血のイベントが多くなった(JASN 2002)。

なので、ワーファリンは基本的にはAVGの血栓予防には用いられない。ただ、特殊な過凝固の症例には用いる場合はある。

FISH OIL
これに関しては、AVGの血栓症を予防するかもしれないと報告されており、4g/dayの使用は推奨されている。(JAMA 2012)

その後の報告でFISH OILもRCTで効果がないという報告が出ている(JAMA 2017)

AVFにはボタンホール穿刺(同じ穿刺部位に穿刺を行うこと)がいいと言われているが、これのデメリットは感染リスクが上昇することである。

特に今回のことを調べるまでは、漫然とした使い方をしていたと感じた。
とても、今回も勉強になることがたくさんで、なるべく患者さんに生かしていけるように努力したい。