2017/01/24

IgA腎症の治療って(Treatment of IgA nephritis) パート3

今回紹介された患者さんで下記の患者さんがいた
「IgA腎症で扁桃摘出+ステロイドパルス療法、その後ステロイド後療法も終了した寛解維持をされている患者さんです。よろしくお願いします。」
内服薬を見てみるとコメリアンという抗血小板薬を飲んでいた。
恥ずかしながら、自分がIgA腎症での抗血小板薬の使用の経験が乏しく、どのくらい有効で継続していいかわからなかった。
なので、今回抗血小板薬のIgA腎症に対する有効性について少し触れてみたいのとIgA腎症の最新の論文を示したい。

抗血小板薬(ジピリダモール、塩酸ジラゼブ、アスピリンなど)のIgA腎症に対する効果はわが国で多施設のRCTが組まれて尿蛋白減少効果が示されているが、英文報告がなく国際的な認知には至ってはいない。
システマティックレビューでジピリダモールの腎機能障害抑制効果が報告され(Clinical and Experimental Nephrology 2006)、別の研究では有効性は認められなかった(Intern med 2011)。
塩酸ジラゼブに関しては、介入後3−4ヶ月時に尿蛋白減少効果を認めたが、6ヶ月時には統計学的な有意差は認められなく、腎機能障害の改善にも寄与していなかった。

KDIGOのガイドラインでは、抗血小板は使わなくてもいいとしている(Grade 2C)。
日本の報告では治療選択肢に考慮してもいいとしている(GradeC1)

抗血小板薬の使用に関しては、日本と国際的なガイドラインで意見が分かれている部分であるというのが、今回わかった。
これを解決するためには、RCTなどをすればわかるのかもしれないが、抗血小板薬単剤での治療ではなく評価は難しいのかもしれない。

今回、自分は抗血小板薬を一旦中止してみてタンパク尿の推移をみることとした。
今後のタンパク尿の推移を見ていきたいと思う。


また、最新の話題としてIgA腎症の重症度や進行に関してコペプチンがマーカーとして有用であるという報告がNDTからされた。コペプチン(Copeptin)はバゾプレッシンの前駆物質から生成されるペプチドであり、糖尿病の予測因子になったりも以前に報告されている因子である。
今回の研究ではIgA腎症59人の症例で検討されている。コペプチン濃度が高い症例の方がCre上昇や末期腎不全や免疫抑制剤開始などとの関連が強く、IgA腎症の予後予測因子の一つに有用ではないかという報告であった。

IgA腎症はアジア領域に多く、日本から発信の多い疾患である。
我々も症例から色々と学び、治療や診断など発展させられるようにして行きたいと感じた。