2017/01/01

透析患者のアクセスを再考する(access of hemodialysis patients)。

年末の最後の投稿は透析患者のアクセスについて考えるです。
これは2016年のJASNの論文があり、アクセスの違いでの死亡率などを見ている。アクセスに関しては臨床向けでAVFと透析カテーテルの比較である。
ちなみにこの論文もインパクトのある論文top10にあった。

僕らは慢性腎不全で血液透析を腎代替療法として選択した患者で、慣習的に血液透析を始めるときにシャントの増設を行い血液透析を始める。

シャント増設の時期に関しては、個人個人の考えがあるとは思うが、自分はGFRが10を切るのが数回持続する様であれば提案する様にしている。

透析開始時期に関しては日本透析学会のステートメントでは、腎不全に伴う症状がない場合でもGFR<2を下回るまでには透析を開始するのが望ましいとなっている。

透析開始時期に関しては有名な論文としては2010年のNEJMの論文であろう。
この論文は
1) GFR=10-14ml/min での早期導入と 2) GFR=5-7ml/min での晩期導入
の2つのグループにランダムに患者を振り分け3年以上観察した結果、死亡率、合併症に関して差は見られなかったというものである。半分近くが腹膜透析患者であったりと実際のpopulationと異なる部分はありますが、とても重要な論文です。



シャントの増設をするときに患者さんは
「もう少し粘らせてください、様子を見させてください」
とシャントの増設が遅れてカテーテルで透析を行い、その時にシャント増設をする患者がいることは事実である。
なんとなくはカテーテルの透析は死亡率高いなとわかってはいたが、今回の論文は重要である。

この研究はコホート研究で115425人の67歳以上の血液透析患者で検討している。
比較としては
1)シャント増設、2)シャント増設を行なったがシャントがダメでカテーテルで導入、3)カテーテルで導入の3群を比較している。
結果は
シャント群とカテーテル群の比較:
58ヶ月の段階でシャント増設群ではカテーテル群に比較して死亡率が少なかったと報告している(HR:0.50,95%信頼区間 0.48-0.52 p<0.001)。
死亡率もシャント増設群では6ヶ月で9%,12ヶ月で17%,24ヶ月で31%なのに対して、カテーテル挿入群では6ヶ月で32%,12ヶ月で46%,24ヶ月で62%であった。

シャント増設を行なったがシャントがダメでカテーテルで導入群とカテーテルで導入の群の比較:
結果は
58ヶ月の段階でシャント増設を行なったがシャントがダメでカテーテルで導入群ではカテーテル群に比較して死亡率が少なかったと報告している(HR:0.66,95%信頼区間 0.64-0.68 p<0.001)。
死亡率もシャント増設を行なったがシャントがダメでカテーテルで導入群では6ヶ月で15%,12ヶ月で25%,24ヶ月で42%なのに対して、カテーテル挿入群では6ヶ月で32%,12ヶ月で46%,24ヶ月で62%であった。

なので、僕らはこのデータなどもしっかりと参考にして患者へのアクセスを考えていく必要があるし、しっかりとシャント増設を勧めることが重要である。