2017/01/26

AF with dialysis patient (透析患者の心房細動)〜anticoagulation therapy(抗凝固薬)〜

今回腎臓内科医にとって常々考えなくてはならない、慢性腎不全患者や透析患者が心房細動を発症したり発見したときに抗凝固薬はどうしよう?と常々考えるであろう。

心房細動患者の疫学については、高齢者であるほど発症率が高くなる(全年齢1%→80歳以上では8%)(JACC 2006)
心房細動と慢性腎不全の関連は血液透析患者の8-34%に心房細動が発症し、腹膜透析患者の7%に発症すると言われ、比較的頻度が高い(JASN 2011) (Europace 2010)
また、別な報告では末期腎不全に67%の割合で心房細動が起こっているという報告もあり、やはり腎不全と心房細動の発症に関しては関連がありそうである(Circulation 2013)。

なぜ、腎不全になると心房細動が多くなるのかははっきりとした原因はわかってはいない。
今回は抗凝固薬について触れたいと思う。

まず、腎不全や心房細動があって併発する危険性の高いものとしては下記のものが挙げられる。
・脳卒中:
脳卒中に関しては慢性腎不全で頻度が上昇する合併症である。腎機能が低下に伴い発症リスクも上昇する(NDT 2007)
心房細動自身の脳卒中リスクを上昇はさせるが、両者が併存している場合に慢性腎不全は単独のリスク因子であり、またCKDがあることが脳卒中の予測因子としては重要である。
・死亡リスク:
死亡リスクは腎機能の低下とともに上昇することがわかっている(NEJM 2004)。
腎機能障害に心房細動が併発し死亡率が上昇するかの検討は困難であるが、報告では死亡率上昇が示唆されている(AJC 2003)。
・出血リスク:CKD(特に血液透析患者)では正常な人に比べて出血リスクが上昇することがわかっている。また、ワーファリン治療をしているCKD患者では出血リスクがさらに増加する。特に消化管出血のリスクが高くなる(CJASN 2008)。

eGFR:30-59の場合:
CHADS2スコアが1以上であれば抗凝固治療を推奨している(Grade 1B)。
CHADS2スコアが0であれば、何も薬物治療をしないよりは抗凝固治療かアスピリン投与はしたほうがいい(Grade 2B)。
抗凝固薬の選択はNOACがワーファリンより推奨される(Grade 1B)。

eGFR:15-29の場合:
CHADS2スコアが1以上であれば何もしないよりは抗凝固治療を推奨(Grade 2B)
稀だがCHADS2スコアが0であれば抗凝固薬を飲ませるかは意見が分かれるところ。
抗凝固薬の選択はワーファリンがNOACより推奨される(Grade 2C)

eGFR:15未満で非透析患者:
eGFR15-29の場合と同様に考える。

透析患者:
基本的には抗凝固療法は推奨されない。
ただ、心房内血栓や弁疾患や以前に脳梗塞を起こしたりした場合にはワーファリンお投与が推奨される(Grade 2C)。

ワーファリンに関して
投与後90日はしっかりとモニタリングを行い、INRの目標を2-3の範囲に持っていくようにする。

これは腎臓内科医が多く質問される内容であると思う。
今回のことを踏まえてしっかりと患者の管理を考えていけるように自分も努力しよう。