今回は糖尿病患者さんが妊娠したらということについて考えてみたい。
糖尿病の患者さんは316万人であり、女性は140万人の時代になっている(2014年の調査、今度は2017年に行われる。)
つまり、出会う確率も非常に高く、また腎疾患との関連も強いため認知する必要がある。
糖尿病患者での妊娠で腎臓に影響があるものとしては下記である。
アルブミン尿:非糖尿病患者においても60%以上がGFR増加し、アルブミン尿の排出は増加する。同様に糖尿病性腎症を有する人も妊娠を契機に増加するが、出産と同時に元に戻ることが多い。ある研究でも糖尿病性腎症で30-300mg/dayの患者が妊娠した際に尿アルブミンは708mg/dayに増加し、数名がネフローゼレベルのタンパク尿(3g/day以上)を呈したが、全員が出産後12週間で元の値に戻っている。
腎機能:腎機能に関しては、パート2で書いたように腎機能障害がもともとある人はリスクが高くなる。また、糖尿病患者で微量アルブミン尿やタンパク尿が出ていない症例は腎機能悪化のリスクは低い。
糖尿病性腎症は血糖コントロールが問題なくても胎児成長障害、出生前胎児テスト異常、preeclampsiaのリスクが上昇する。妊娠合併症の発生で帝王切開のリスクは上昇する。
糖尿病性腎症の妊婦では血圧コントロールをしっかりと行う。その際に通常であれば推奨されるACE-IやARBの使用は禁忌とされている。理由としては薬剤に伴う催奇形性のためである。そのため、この点には注意する!目標の血圧はADA(アメリカ糖尿病糖尿病学会)の推奨では120-160/80-105である。
降圧薬に関しては、アルブミン尿を伴う症例には非ジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗薬(ヘルベッサーやワソランなど)がいいのではないかと言われている(KI 2004)。理由としては降圧作用に加えて、タンパク尿の低下作用も期待してである。しかし、タンパク尿低下に対してはそこまで効果的ではないという報告も多い。
妊婦に対して使用できる降圧薬に関しては、メチルドパ(アルドメット:α2刺激薬)、ヒドララジン(アプレゾリン)などであり、これに関しては知っておく必要はある。
また、preeclampsiaの予防にlow doseのアスピリン使用(81mg/day)はケースによっては推奨されている(Lancet)。なので、リスクが高い症例(慢性的な高血圧症例や妊娠前から血圧が高い症例)は妊娠後12週から出産まで使うのも一つの選択肢かもしれない。
今回は糖尿病腎症と妊娠についてまとめてみた。
ここの部分の管理は本当に難しいなと常々思っているが、我々が知識のアップデートを怠ってはいけない領域である。