2017/01/03

多発性骨髄腫を透析で治療できないか?導入編 (Dialysis for multiple myeloma)

今回上記の話にしたのは多発性骨髄腫の患者さんで一定頻度で腎機能障害を起こす患者がいる(この話は希望があればまた、書きます)。
その際に腎機能障害の改善が乏しい際に、緊急的な血液透析の方法を選択することが多い。次の投稿で述べるが、血液透析を行う際にヨーロッパの研究でHigh cut off dialysisの研究(EuLite Trial)の研究が今年学会で報告されていた。以前にこのブログでも触れている。
それに合わせて、最初は透析の基礎的なことをお話ししようと思う。

透析に関しては、ダイアライザーの部分が重要な役割を果たしている。
ダイアライザーで血液の流れと逆向きに透析液を流すことで、拡散と濾過の原理を用いて尿毒症物質の除去や電解質の調整や不足物質の補充、水分の除去を行い廃絶した腎臓の代わりとして働いている。

ダイアライザーを通過する際に、どれだけ物質が除去されたかを示すのがクリアランスであり、血液流量(QB)、透析液流量(QD)、総括物質移動面積係数(KoA)で規定される
(ちなみにQB,QDで遅い方がクリアランスを規定する:
例として通常透析ではQB:200ml/min,QD:500ml/minの際はQBが規定するし、
CRRTではQB:150ml/min,QD;500ml/hr=8.8ml/minでは、QDが規定する)。

ダイアライザーに関してはβ2MGのクリアランスでⅠ〜Ⅴ型に分類されている。

KoAはKo(透析膜の通過しやすさ)×A(面積)で決定される。
ここで、面積が大きくなればダイアライザー内の通過時間が長くなり分子量の大きな物質が除去されやすくなる。
また、膜の種類によって膜孔の大きさが異なり大きいと分子量の大きなものが抜けていく。分子量としてはダルトン:分子量の単位で示されている。

・小分子量(500ダルトン以下)のものとして、尿素窒素(60ダルトン)、クレアチニン(130ダルトン)、電解質(数十〜数百ダルトン、K(39ダルトン)、尿酸(168ダルトン)、水(18ダルトン)、アルミニウム、アンモニアなど

・中分子量(500~5000ダルトン)のものとしてビリルビン(535ダルトン)、ビタミンB12(1355ダルトン)、ポリペプチド、ポリオールなど

・大分子量(5000ダルトン以上)のものとしてβ2-MG(11800
ダルトン)、α1ミクログロブリン(33000ダルトン)、インスリン、プロラクチン、レニン、ヘモグロビン(68000ダルトン)、アルブミン(69000ダルトン)など

免疫グロブリンはIgG(15万ダルトン)、IgG(16万ダルトン)、IgM(90万ダルトン)になっている。
軽鎖はIgG(γ鎖:53000ダルトン)、IgM(μ鎖:65000ダルトン)、IgA(α鎖:55000ダルトン)
IgE(ε鎖:73000ダルトン)である。

今回は透析の基礎的な部分をお話しさせていただいた。これを基礎として次回EuLite trialなど骨髄腫と透析に関して触れる予定である。