「米国腎臓内科あるある」のひとつに、腎臓内科に興味を持っているがまだ将来は決めていない学生さんや研修医の先生方のことをprerenal(腎前性)と呼ぶというジョークがある。日本でも同じなのかな。さてご存知の通り米国の腎臓内科は人気がないので、学会は腎前性の彼らをいかに腎性にするかをいろいろ考える(たとえばCJASNには腎臓内科医のキャリアを選択する要因はなにかを分析した論文が数年前にでた、doi:10.2215/CJN.03250312)と共に、腎前性の層を増やすにはどうしたらよいかも考えている。
そのひとつで最近出た論文が、内科レジデンシーにおける選択科ローテーション(elective)で腎臓内科は入院診療のexposureに比重を大きく置きすぎて、外来診療へのexposureが足りないのではないか、というものだ(doi:10.3109/0886022X.2015.1055693、Renal Failureなんて雑誌があるとは初めて知った)。全米の腎臓内科フェローシップのprogram directorに調査を行ったものだ。こういう「学生さんや研修医の先生方にいかに興味を持ってもらうか」というのがよく話題に上るのも「腎臓内科あるある」だ(日米どちらもそうな印象をうける;腎臓内科の先生方は元々教えるのが好きだし、腎臓学というのは独りで学べるようなものではないからだ)。
論文の感想として、たしかに外来へのexposureが多いほうがよいと思う。一般腎臓内科外来(腎機能低下、血尿、蛋白尿など)のみならず、より特化したCKD外来、腎炎外来、尿路結石外来、血液透析外来、腹膜透析外来、自宅透析外来(米国にはある)、腎移植後外来、腎移植前外来(レシピエント、生体腎の場合はドナーも)などを見せるのもいいだろう。また論文にもあるようにmentorshipをきちんとして、指導する専門医がシステマチックに腎臓内科の魅力を伝えることも重要だ。
ただ、腎臓内科を選択する内科レジデント(とくに米国の医学部を卒業したレジデント)が年々減っているのは、こういっては身も蓋もないが勤務時間のわりに儲からず割に合わないからだ。その為、せっかく腎臓内科専門医まで取ったのに転向してホスピタリストをやる人までいるくらいだ…(腎臓内科をやると全身を診るから、よいホスピタリストになれることは事実だが;あと自分が診るので腎臓内科コンサルトをしなくて済むという利点?もある)。腎臓内科が居るとアウトカムがよくなるなどのスタディをだし、みんなが「やっぱり腎臓内科は必要だ」と考えを変え、結果reimbursement(診療報酬)の構造が変わって米国の腎臓内科がリーズナブルに儲かるようになればよいなと思う。