2015/06/05

A man is as old as his arteries

 少子高齢化社会というが、少子化と高齢化は別の問題で、高齢化というのは(健康寿命が延びることなのだとしたら)社会としての目標が達成されているということなのではないか、という発言を聞いてなるほどと思った。そしてそのあと、高齢化社会の医療がどうあるべきかについての社会福祉的なお話になるのかなと心の準備をしていたら、思いっきり基礎医学のお話で、びっくりしたが白熱した60分だった。ただ話がかなり多岐におよんだのでここにまとめ切れないのと(Klothoのお話はせっかく明日に発見者の黒尾先生がいらっしゃることだし、それも聴いてからにしよう)、スライドの進行がはやかったので引用論文をほとんどメモできなかったのが残念だ。

 Sir William Oslerは"A man is as old as his arteries"という至言を残されたが、腎の老化(それは翻ってKlothoのこともあり全身の老化につながるわけだが)は内皮細胞傷害、細動脈の動脈硬化などによる虚血に端を発し、虚血応答が悪くて(VEGFを産生できない、NOが十分に産生できずCathepsin Dが十分に活性化されずplasminogenからangiostatinが作れない、ミトコンドリア内の呼吸鎖コンプレックスIIIから活性酸素が大量にでてしまう;Molecular Cell 2012 48 158←ミトコンドリアルな活性酸素、すなわちmROSは少量だとストレス応答になり身体によいとされているが出過ぎると悪いとかんがられ、このような概念をmitohormesis theoryというらしい)、間質の線維化、尿細管の萎縮、糸球体の虚脱などが起こると考えられている。

 しかし内皮細胞は腎臓にだけあるのではない。脳にはneurovascular unitとよばれる相似した構造があるし、膵ランゲルハンス島の血管も糸球体に酷似した構造をとっている。だから慢性腎臓病やアルブミン尿と認知障害は相関するし、高血圧を起こすと膵島の輸入細動脈が傷害され虚血応答で膵島が肥大し線維化も起こす(Trends Endocrinol Metab 2010 21 457←この時期はまだ血糖には変化はみられない)。しかし生活習慣病は内皮細胞の傷害→適応応答→適応不全→臓器不全の流れで進行するというわけなので、高齢者が健康寿命を伸ばすためには、早期に前倒しでこの流れを発見して中年期から先制治療することが重要だと先生は説いていた。